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「ブスのマーケティング戦略」 田村麻美著 文響社 [ビジネス書]


ブスのマーケティング戦略

ブスのマーケティング戦略

  • 作者: 田村麻美
  • 出版社/メーカー: 文響社
  • 発売日: 2018/12/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


よくもここまで赤裸々に・・・

よくもここまで赤裸々に書いたなあとまずは著者に、そして、よくぞ出版を許したなあとご主人に感心しきりである。その点は、著者もじゅうじゅう承知であり、ご主人も理解の上であることが「あとがき」に記されている。「マーケティング」の本は、いろいろあるだろうが、商品として売り込む戦略について記すにあたり、ブスとしての自分(の経験)を用いている本は、初めてではないかと勝手に想像する。それも「本名と顔を出し、処女喪失、過去の恋愛、性体験や合コンについて書かなければ、説得力はない」との思いから、悩んだ末、夫に相談し、了解を得ての出版である。

一貫して感じるのは、涙ぐましいほどの自己承認欲求を著者が持っているということだ。それは、他者に受け入れてもらいたい、肯定的に評価されたい、愛されたいという思いだ。そのことが、誕生時から記されていく。煎じ詰めれば本書は、ブスの私が、いかに他者の目に留まり、恋(性)愛の相手と見なされ、そして結婚に到ったか、という話だと言える。その中で、自分の商品価値を高めるための努力と挫折も示されていく。ユーモア・笑いとともに記してはいるが、多くの涙が流されたことと思う。ユーモアで覆われているだけに、その悲しみの深さも伝わってくる。自己承認欲求は、だれしも持つ思いではないだろうか。それゆえにも説得力がある。

明治・大正・昭和期の近代小説のなかに登場する「よくってよ」と同意したり、「いけませんわ」と拒否するような女性をのみ女性とするなら、著者をふくめ本書に登場する女性たちは、規格から完全に外れてしまう。ところが実は、規格外が現実であって、小説の女性たちはロマンにすぎない。そんなことも感じつつ読んでいた。

「なんだ肝心のマーケティングについて書いてあるの、どうなの?」と問われると、経済に疎い評者にはなんとも言えないのだが、ハラ(肚)に入るような仕方でその要諦を学べたように思う。〈「マーケティング戦略」というたいそうなタイトルをつけさせていただいたが、私がやってきたことはこれだけだ。-自分を客観視し、相手の気持ちを想像して、行動すること-それしかしていない〉と、著者はいう。だから、それが分かればいいのだろう。少なくともそのことは、書いた方の覚悟が半端でないだけに、ハラ(肚)に入ったように思う。

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