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「世界建築史 15講」 彰国社 [建築など]


世界建築史 15講

世界建築史 15講

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 彰国社
  • 発売日: 2019/03/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


単なる読み物としても楽しめる

西洋中心の世界史、世界建築史に異議を唱えての出版のようだ。書籍タイトル(英文)にある「グローバル ヒストリー」に関し、(『はじめに』に)次のように示されている。

〈今日のいわゆるグローバル・ヒストリーが成立する起源となるのは西欧による「新世界」の発見である。西欧列強は、世界各地に数々の植民都市を建設し、それとともに「西欧世界」の価値観を植えつけていった。そして、これまでの「世界史」は、基本的に西欧本位の価値観、西欧中心史観に基づいて書かれてきた。西欧の世界支配を正統としてきたからである。そこではまた、世界は一定の方向に向かって発展していくという進歩史観いわゆる社会経済史観あるいは近代化論に基づく歴史叙述が支配的であった。 / 世界建築史もまたこれまでは、基本的には西欧の建築概念を基にして、古代、中世、近世、近代、現代のように世界史の時代区分に応じた段階区分によって書かれてきた。そして、非西欧世界の建築については、完全に無視されるか、補足的に触れられてきたに過ぎない。しかし、建築は、歴史的区分や経済的発展段階に合わせて変化するわけではない。また、建築の歴史、その一生(存続期間)は、王朝や国家の盛衰と一致するわけではない。世界建築史のフレームとしては、細かな地域区分や時代区分は必要ない。世界史の舞台としての空間、すなわち、人類が居住してきた地球全体の空間形成と変容の画期が建築の世界史の大きな区分となる。・・・中略・・・本書は、日本におけるグローバル建築史の叙述へ向けての第一歩である〉。

そして、その内容は〈第Ⅰ部では、建築の全歴史をグローバルに捉える視点からの論考〉が示される。〈第Ⅱ部では、まず、世界中のヴァナキュラー建築を総覧する。人類の歴史は、地球全体をエクメーネ(居住域)化していく歴史である。・・〉とあって、世界各地域の「その土地特有の」「ヴァナキュラー建築(地域に土着する伝統的建築)」が紹介される。〈第Ⅲ部では、建築を構成する要素、建築様式、建築を基本的に成り立たせる技術、建築類型、都市と建築の関係、建築書など、建築の歴史を理解するための論考をまとめた。・・〉とある。

本書のはしばしから、そういう見方もあるのかと啓発を受ける。〈建築の起源は、原初の住居、すなわち、簡単な覆い(シェルター)の小屋である。あるいは、特別な空間を記し、区別するために、一本の柱や石を置く行為である。(『はじめに』)〉といった身近で小さな視点からの、あるいは、〈建築を含めて私たちを取り巻く事物はすべて、この地球を原料としている(01「大地と建築」の世界史 Buildinghood(大地からの構法)〉といった、大陸間のプレートの動きに着目したスケールの大きな視点からの論考もある。

建築に直接関わらない方でも、読み物として楽しめるように思う。

2019年5月29日にレビュー
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