親の「死体」と生きる若者たち 山田孝明著 ⻘林堂 [ノンフィクション]
心中を察するうえで(痛いほど)参考に
「死体遺棄事件」について聞くことがある。事件現場は自宅、死体は「親」、遺棄したのは「子供」である。子供といっても50代の、中年であったりする。
それらを見聞きするときに、死亡届を出すなど、親の死に面して具体的な行動ができず、相談する人もなく、思いあぐねているうちに、外部の人間に発見されて新聞沙汰になったのだろうと考えていた。
本書は、高齢の親とその「ひきこもり」と称される子どもたち相互のモンダイに寄り添ってきた方の報告である。当事者たちの経験談も真率に示されている。これから、ますますこうしたモンダイは増えていくだろうと予想される。そうしたモンダイを抱える方々の心中を察するうえで(痛いほど)参考になる。
「私たちが今生きている社会には『そうせざるをえなかった人たち』が生きています。だからこそ、そうせざるをえなかったことに対する理解が必要なのです。私たちは今、そんな時代を生きているのです」との著者の言葉が響いてくる。
2019年5月29日にレビュー
8050問題 中高年ひきこもり、七つの家族の再生物語 (集英社文庫)
- 作者: 黒川 祥子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2021/10/20
- メディア: 文庫