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「こんな家に住んできた 17人の越境者たち」 [自伝・伝記]


こんな家に住んできた 17人の越境者たち

こんな家に住んできた 17人の越境者たち

  • 作者: 稲泉 連
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2019/02/08
  • メディア: 単行本


毒となるか薬となるか・・

本書は、『週刊文春』に「新・家の履歴書」として連載されたインタビューの集成。安住の家をあとにして「越境」してきた方々が、過去をふりかえりつつ、思い出の「家」と自分の人生について語る内容だ。

タイトルを見ると「家」が赤い文字で強調されているが、内容的には、副題の「越境」の方に重きがある。自分の家の敷居から外へ出る。外国に渡る。異文化を受け入れる。階級を越える・・・。

本書中、すごいなあ、かなわないなあと感嘆したのは、主に女性「越境者」たちだ。井原慶子さん、田中未知さん、ベニシア・スタンリー・スミスさん、それに佐々木美智子さん。

とりわけ、佐々木美智子さんには、その「越境」力に惚れ惚れする。新宿ゴールデン街でバーを営む方だ。人間として他者とふかく関わるというのも、ある意味「越境」といえるだろう。自分を越えないとそれはできない。難なく軽がると「越境」しているように語られるが、その実、たいへんなものがあったであろうことは確実だ。そうして得たものは人間的な深さといったものかもしれない。

「越境者」の精神とふるまいは、「家」に安住することを願う人間には脅威であるにちがいない。本書はその点、ある意味において毒物といえる。毒物は、時に薬にもなる。さて、あなたにとって、毒となるか薬となるか・・・。

●水俣で
石牟礼道子(作家) 魂のひっとんだ子
●物語が生まれるとき
角野栄子(児童文学作家) 玄関を飛び出して
東山彰良(作家) いつか祖父のように
●新宿に流れ着いて
リービ英雄(作家) 日本語を書く部屋
佐々木美智子(新宿ゴールデン街バーのママ) 屋台を引いた日々
●アメリカから日本へ
マーティ・フリードマン(ミュージシャン) 輝いていたJポップ
アーサー・ビナード(詩人、エッセイスト) 日本語に導かれて
●人生の原点
ベニシア・スタンリー・スミス(ハーブ研究家) 京都の古民家
高中正義(ミュージシャン) 雀荘とバハマ
鷺巣詩郎(作編曲家) 父のスタジオで
●ヨーロッパへ
田中未知(作曲家) ここが約束の地
原田哲也(元オートバイレーサー) モナコの海の見える家
井原慶子(レーシングドライバー) セナが住んでいた部屋
●崩壊する国で
金平茂紀(キャスター) テレビの力を信じたい
中村哲(医師、ペシャワール会現地代表) 蝶を追いかけて
●科学のフロンティア
江崎玲於奈(物理学者) エジソンになりたい
利根川進(生物学者) 研究者の本来の姿


2019年4月25日にレビュー

新宿―ゴールデン街のひとびと

新宿―ゴールデン街のひとびと

  • 作者: 佐々木 美智子
  • 出版社/メーカー: 七月堂
  • 発売日: 2018/04/01
  • メディア: 単行本





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