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「世界のすごいお葬式」ケイトリン・ドーティ著 新潮社 [民俗学]


世界のすごいお葬式

世界のすごいお葬式

  • 作者: ケイトリン・ドーティ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/02/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


故人を悼むゆったりとした時間をどのように

センセーショナルな「すごい」方法でなされる葬式が多々示されてあることを期待するなら、ガッカリするにちがいない。世界の特殊と思える葬送の仕方をいくらかでも知る方であれば、さして「すごい」と思わないことだろう。それでも、くず野菜から堆肥をつくるように、死体から堆肥をつくるコンポストの話しなどでてくる。日本の新しい葬送事例もとりあげられる。

著者は葬祭業を営む女性だ。アメリカも日本同様、家族・身内の者が故人を悼むゆったりとした時間をもつことができなくなっている。病院から葬儀屋へ、流れるように進む。葬儀屋は、遺体を自宅に安置させることなく、「悲しみにくれる遺族を故人と隔離する」のがその業態となっている。そうした中、著者は、かつての姿を取り戻そうと願う。

著者は、いう。「私たちは西洋の葬儀業界を改革し、現状ほど利益優先ではない仕組み、遺族の参加を促すような仕組みを導入していく必要がある。しかし、・・略・・自分たちのやり方だけが正しく、“ほかの人々”のやり方はどれも敬意を欠いて野蛮であるという誤った信念を持ち続けているかぎり、改革はおろか、現在の葬送システムに疑問を抱くことさえできないだろう。」

著者は、そのような思いから、「“ほかの人々”のやり方」を知るために異文化への旅にでる。本書は、その旅の報告である。センセーショナルな死体の取り扱いだけに興味がある方には、冗長に感じられるにちがいない。旅先も限られ、決して世界全体に及んでいるわけではない。しかし、そうではあっても、故人を身近に置いて悼む時間をどのように持っているものか異文化理解の一冊として読んでソンはない。

はじめに

*住民参加の野外火葬
──アメリカ・コロラド州クレストン──
*トラジャ族、秘境の水牛とミイラ
──インドネシア・南スラウェシ──
*ガイコツと花の祝祭の陰に
──メキシコ・ミチョアカン──
*死体で肥料を作る研究
──アメリカ・ノースカロライナ州カロウィー
*地中海の陽光あふれる葬儀社
──スペイン・バルセロナ──
*高齢化と仏教とテクノロジー
──日本・東京──
*頭蓋骨が取り持つ信者と神のあいだ
──ボリビア・ラパス──
*理想の死に方、葬られ方
──アメリカ・カリフォルニア州ジョシュアツリー──

おわりに

2019年4月23日にレビュー

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  • メディア: Kindle版



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  • 作者: 松濤 弘道
  • 出版社/メーカー: 雄山閣
  • 発売日: 2019/02/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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