「発酵食の歴史」マリ=クレール・フレデリック著 原書房 [食生活]
食生活をかえりみ、本物を取り入れるよう促される
発酵食品・飲料の歴史の本。人類の食の歴史のなかで、発酵がどのような位置を占めてきたか、それがどのように伝播し、世界の各地で食されてきたか記される。日本の食についての記述も多い。世界の発酵食についての該博な知識に圧倒される。
人類にとってたいへん身近なもので、かつ有用なものでありながら、発酵は腐敗と同列に誤まって位置づけられてもきた。とりわけ、パスツールが細菌を明るみに出して以来、醗酵は闇に埋もれてきたと言っていい。それは「パン生地を醗酵させる」ではなく、「パン生地をやすませる」などという表現からもうかがい知ることができる。
その闇に埋もれた発酵・食に著者は光をあてる。火(力)を用いて調理する以前、狩猟した獲物の肉を食しやすくする上で発酵があったことなど、示す。フツウの食の歴史の本なら、抜け落ちてしまうところではないだろうか。また、食品産業の提供するパンやチーズやビールと昔ながらの製法によるそれらとの違いなど、現在の醗酵食の状況も示される。
自分の食生活をかえりみ、本物を取り入れるよう促される本だ。
2019年3月31日にレビュー