「未来のエリートのための最強の学び方」 佐藤優・野口範子 集英社インターナショナル [教育・学び]
未来に向け、「知的欲求が刺激される」本
佐藤優氏の母校:同志社大学での講演(演題「文系学生のための教養の習得と活用法」、「理系学生のための教養」の2講演)と野口範子(同志社大学生命医科学部)教授との対談から本書は成っている。
意地のわるい言い方をするなら、本書は佐藤氏の母校:同志社大学と同大に新しく設置された「サイエンス・コミュニケーター養成」のための講座の宣伝本である。しかし、その思い入れ、母校愛にはそれなりの根拠があり、新設講座にもそれなりの必要性がともなうことが示されて、読後の印象としては、なるほど、ごもっとも、むべなるかな・・といったところだ。
佐藤氏の既刊を読んでいる方であれば、〈外務省研修生がモスクワの大学を「退学」させられた〉ことをご存知のはずだ。本書でもそのことが取りあげられる。「日本の超難関大学を卒業して、外交官試験に合格し」た面々が、憂き目にあった理由は、「世界スタンダードの教養を身につけ」ていなかったことにある。合格するために、理系あるいは文系の特定の科目を“捨て”て試験に臨み、暗記に終始して身につけた程度の学力では、国際基準に相当せず、いわば“捨てられる”ことになるということだ。
「まえがき」で著者は、「本書で述べていることを要約すると、文科系、理科系を問わずに高校教科書レベルの知識をきちんと体得しておけば、国際基準での教養が十分に身につくということだ」と率直簡潔に記している。そして、さらに補足して〈しかし、教科書の記述は単調なので、自分が苦手意識を持っている分野をマスターするのは至難の業だ。それを克服するためには、「この知識を得なくてはならない」という知的意欲を持つことだ。本書を精読していただければ、あなたの知的欲求が刺激されると私は確信している。〉と続ける。
本書には、“捨てたもの”を、埋め合わせるうえで「教科書」にまさる著者推薦のテキストが紹介され、また、独学するうえでの具体的方法も示される。さらには、「STAP細胞」事件と「日本社会に潜む構造的問題」と錬金術のことなども語られる。神学という「役に立たない」と見なされがちな学問を延々と学んできた方ならではの深い内容も示されて興味深い。
2019年3月18日にレビュー
詳説世界史B 改訂版 [世B310] 文部科学省検定済教科書 【81山川/世B310】
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- 発売日: 2017
- メディア: テキスト
地方上級 教養試験 過去問500 2020年度 (公務員試験 合格の500シリーズ6)
- 作者:
- 出版社/メーカー: 実務教育出版
- 発売日: 2019/02/14
- メディア: 単行本
2023-08-08 07:47
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