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自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 (講談社現代新書)  石井 暁著 [外交・国際関係]


自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 (講談社現代新書)

自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体 (講談社現代新書)

  • 作者: 石井 暁
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2018/10/17
  • メディア: 新書


「闇組織」に消されないために出版・・

副題や帯にある文言から旧・帝国陸軍中野学校をイメージした。スパイ活動をしていた組織である。その「遺伝子」を「引き継」いだ「闇組織」が、自衛隊の中にあってもおかしくはなかろうと思いつつ、本書を手にした。

「別班」というのが、その「闇組織」の名前で、「自衛隊の組織図にも載っていない秘密情報部隊」であるという。著者は、文民統制との関係で、そのような「闇組織」の存在はオカシイと感じ、「闇組織」に関わる人々にアクセスし、事実上存在することを確かめ、そのことを共同通信社から新聞各社に配信する。それは、国会で論議されることにつながった。著者は、いわば、「闇」の組織を明るみに引き出したわけだ。

本書は、もっぱら、その取材過程の苦労話といっていい。虎の尾を踏むような取材がなされたことは分かる。興味深い内容であることも認める。しかし、不偏不党のジャーナリスティックな記述ではない。インタビューのウラを取れているのか、証言者自身が真実を話しているのかどうかの疑問も残る。(そもそも、特定の人物から「証言」を引き出すのが精一杯で、そのウラを取るのは難しかろうと思いもするが・・)。

どうも、本書出版の最大の目的は、著者が「闇」に消されないため、自己保身のため、であるらしい。『おわりに』に次のようにある。〈先日、元別班員の一人から、/「市ヶ谷の別班の本部には、あなたの顔写真と経歴が貼ってあり、『要注意』と書かれている」/と聞き、驚くと同時にあらためて権力監視への闘志をかき立てられたばかりだ。/一方、相手が国家権力それも武力組織だけに正直、恐怖を感じることも度々ある。ある時、キーパーソンに「本当に私にガードをつけてくれたのですか」と聞いてみたが、彼はニヤリと笑っただけだった。自分自身を守る手段は全て尽くしたい。本書を出版して頂きたいと考えたのも、その手段の一つだ。これまでの取材過程をできる範囲で明らかにすることで、恐ろしい実力組織である別班を少しでも牽制することができれば、と思っている。〉

2019年3月14日にレビュー

陸軍中野学校 [DVD]

陸軍中野学校 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2012/06/28
  • メディア: DVD


「日本のインテリジェンスの恥」と題する項目に引用されている佐藤優のコメントは興味深いが、引用先が示されていない。(以下、その項目からの抜粋)

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元外務省主任分析官で作家の佐藤優からは「インテリジェンスに関する戦後最大のスクープ」と過分な評価を受けた。

〈身分を偽装した自衛官がヒューミントを行っているという話は、複数の筋から何度か聞いた。

そもそも自衛官を含む公務員が入手した情報は国民のものだ。

主管大臣である防衛相の統制から外れた別班が、政府の決定に効果的に用いられることはあり得ない。なぜなら高いレベルの政策決定に影響を与えるような秘密情報については、情報の内容だけでなく、情報源の信頼度、入手の経緯、他の情報と照合した上での評価を併せて報告しなくてはならず、出所が明示できない別班の情報は評価の対象外にあるからだ。

私は ・・(自身の経験から)・・ 別班の情報が政策決定に用いられたことは、文字通り一度もないと断言できる。関係者の自己満足のためだけに収集された情報は意味がない。税金の無駄遣いだ。

法令上の根拠のないヒューミントを外国で行っていることが露見した場合、深刻な外交上の問題を引き起こす危険がある。 陸自の情報担当者らが別班を盲腸に例え、「役に立たない。なくても支障がない。いつ発病(存在が発覚)するかわからない。死に至る可能性もある」としたのは、その通りだと思う。〉p162,163

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