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日本の漫画本300年:「鳥羽絵」本からコミック本まで 清水 勲・猪俣紀子著 ミネルヴァ書房 [マンガ学]


日本の漫画本300年:「鳥羽絵」本からコミック本まで

日本の漫画本300年:「鳥羽絵」本からコミック本まで

  • 作者: 清水 勲
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2018/12/27
  • メディア: 単行本


日本の(いまやメインと言っても過言でない)サブカルチャーの歴史を知るうえで恰好の本

享保5(1720)年の『和漢名筆画本手鑑』から平成29(2017年)の『BEASTERS』まで漫画本の歴史が絵入り(表紙絵など)で示される。書誌学的記述だけでなく、当時の文化状況をしめすコメントなど付され読み物としてもオモシロイ。

目次は、以下のようになっている。 第1章 江戸期:「鳥羽絵」本からの150年 第2章 明治期:暁斎本からカートゥーン本ヘ 第3章 大正期:一平本から4コマ本へ 第4章 昭和前期:講談社本から中村書店本へ 第5章 昭和20年代:横井・手塚本と赤本漫画 第6章 昭和戦後期:劇画本からコミック本へ 第7章 平成期:ストーリー漫画本の多様化 参考資料 索引 

「はしがき」から抜粋すると・・・、〈漫画本は日本漫画史のうえでどんな役割をはたしてきたのか。本書ではそれについて解明したい。/漫画が商品として大々的に売り出されてから300年になる。それ以前の絵師たちは、注文生産で肉筆戯画や戯画絵巻を制作してきた。その後、木版画による小部数の複製戯画制作・販売から商品としての価値を生み出すが、多大の利益をもたらす商品として注目されはじめたのは、享保5年(1720)年、大阪で出版された『鳥羽絵欠び留』『鳥羽絵三国志』『鳥羽絵扇的』『軽筆鳥羽車』など、いわゆる「鳥羽絵」本の登場からである。〉 そして、各時代区分ごとの特徴について記した後、〈本書は単行本でつながる300年の漫画・マンガ史である。それはまた、国立国会図書館で検索しても出てこない赤本・貸本の存在までも明らかにし、単行本を追うことでみえてくるマンガ史でもある。さらにウェブマンガが出てくる時代に、紙からウェブ、ウェブから紙という流れも生まれ、新たなマンガ史が紡がれている。本書はそうした300年史を知るためのガイドブックともなるはずである。(清水勲)〉と記されている。

各章のあたまにIntrodactionが設けられ、(1ページを用いて)その時代区分の特徴が示される。たとえば、第6章 昭和戦後期のそれは〈戦後の昭和マンガの歴史は、①子ども向けマンガから大人向けマンガへ、②少女マンガの固有性の確立、③大人漫画の役割の変化、④海外マンガの吸収の4つのポイントでとらえることができるだろう。また、60年代後半には、現在に続くマンガの単行本化が起こる。漫画本からの歴史をみること浮かびあがる、新しい消費のかたちである。〉とあって、その後、①~④のそれぞれが詳述される。

それから、各年ごとに、ページ上段を用いて発行された漫画本の書誌学的情報が示され、下段(ページの3分の1ほど)でその漫画本の表紙等が(すべてでは無いが)示される。たとえば、〈明治24年(1891)/ ⑯G・ビゴー『東京芸者の一日』自刊/ ⑯政治家・高級官吏・成金などが出入りしていた花街は、彼らの人間らしい行動・表情が見られるため、ビゴーの絶好のスケッチ対象だった。芸者たちは歌舞音曲の芸を売り物にしていたから、身を売る娼婦たちより職業人としてのプライドをもっていた。そんな彼女たちの生活記録が本書である。永井荷風はこの本を愛蔵し、昭和11年に出版した随筆集『冬の蝿』の巻頭口絵にこの画集の「仕事と楽しみが両立する男」(図⑯-2)を使用している。彼女たちのうちには伊藤博文、陸奥宗光、山県有朋などの妻(いずれも後妻)となった者がいた。〉とあって、その絵が示されている。

慶応3年(1867)の解説には〈19世紀半ば、世界で商品としての漫画・風刺画を楽しんでいた国民はあまりなかっただろう。英仏などほんの数カ国だと思われる。そのなかに日本は入っていた。日本の漫画大国への道は、江戸時代にはすでにはじまっていたのである。〉とある。世界に誇る「漫画大国」日本の(いまやメインと言っても過言でない)サブカルチャーの歴史を知るうえで恰好の本に思う。

2019年2月18日にレビュー

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2016/02/25
  • メディア: 単行本



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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2017/02/23
  • メディア: 単行本



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  • 作者: 加藤 秀俊
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2015/05/08
  • メディア: 単行本


https://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2015-07-28
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