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ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ 大村 大次郎著 ビジネス社 [社会・政治]


ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ

ほんとうは恐ろしいお金(マネー)のしくみ

  • 作者: 大村 大次郎
  • 出版社/メーカー: ビジネス社
  • 発売日: 2018/11/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


予想に反してオモシロイ

評者は、大村大次郎氏の本をはじめて読む。ウィキペディアや本書プロフィルを見ると、実名ではなくペンネームらしい。学歴も示されていない。ラジオに出演しているらしいが、評者は聞いたことがない。「元・・」という肩書きは、評論家・作家である佐藤優氏をマネているようでもある。そして、本書タイトルは、人騒がせで、売らんがためにつけたかの印象がある。要するに、言いたいのは、ウサンクサイ思いで読み始めたということだ。

ところが、予想に反して、オモシロイ。面白いだけでなく、タイヘンな本である。タイヘンというのは、啓発的であり、自分の見ている現実世界に対応しているだけでなく、その解決策も提示していると思われるところからくる。

もちろん、啓発的であるというのは「評者にとって」という条件付きである。経済に詳しい情報通には、そうではないと言う方もいるにちがいない。また、本書の解決策を壮大なビジョンとしてではなく、馬鹿げたものと見なす方も中にはいるだろう。しかし、それを承知の上で、未読の方には一読をお勧めしたい。繰りかえし、同じことが、いろいろな切り口で語られる。つまりそれは、現在の「お金の(流通の)しくみ」は間違っているということだ。その間違った「お金のしくみ」がどのように始まって、間違っていると知られながら延々と続いてきたかが示されている。これまでボンヤリとしていた「金本位制」の意味を、評者は本書でやっと把握できた。ニクソン・ショックの意味も理解できた。「17世紀ヨーロッパの悪徳商人」のやり方が踏襲された世の中に住んでいることも分かった。そして今日、喧伝されている「デフレ脱却」のための手順もまた、間違っているらしいことが・・・。

そしてさらに著者は(現実的でバランスの取れた見方を持っており)間違った「お金のしくみ」を、ソノママの状態にしつつ、富んだ者にも貧しい者にも益をもたらす「仮想通貨」の運用方法を提示している。その主張の根拠として著者は、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ブキャナン、榊原英資、森永卓郎、各氏の名を挙げている。

もっとも、どんな有望な解決策と称されるものも、実際に運用してみると、解決策にならない場合もある。著者のいう解決策もそういうものかもしれない。それでも、こんなことを考えている人が現にいると知ることができるだけでも、人間捨てたものではないという気持ちになる。大風呂敷を広げただけなのかもしれないが、広げられるだけ大したものである。そういう意味でも、一読をお勧めしたい。

2019年1月9日にレビュー

赤字の民主主義 ケインズが遺したもの (日経BPクラシックス)

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  • 作者: ジェームズ・M・ブキャナン
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2014/11/14
  • メディア: 単行本



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