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スズメバチの真実:最強のハチとの共生をめざして 中村雅雄著 八坂書房 [生物学]


スズメバチの真実:最強のハチとの共生をめざして

スズメバチの真実:最強のハチとの共生をめざして

  • 作者: 中村雅雄
  • 出版社/メーカー: 八坂書房
  • 発売日: 2018/07/24
  • メディア: 単行本


スズメバチの生態を、(著者の経験もまじえて)よく知ることのできる本

時に人的被害・事故を引き起こし駆除の対象ともされるスズメバチ。しかし、著者は、そうしたスズメバチとの共生を願う。著者のスズメバチへの愛情を感じる本であり、昆虫界の食物連鎖の頂点に位置するスズメバチの生態を(著者の経験をまじえつつ)よく知ることのできる本である。

著者は、在野研究者。小学校教諭の傍ら1970年以来、スズメバチを追ってきた。50年近いキャリアである。こうした方たちの支えによって科学的知識が更新され確かなものとなっているのだなと感じる。

スズメバチに100回あまり刺されたという。以下のような説明ととともに、あやうく死にかけた経験も語られる。「刺されると、焼けた釘に触れたような熱く鋭い痛みがじりじり広がっていきます。頭など刺されると、きついヘルメットを無理やりかぶらされたときのしめつけられるような痛さで、触れなくても手を頭に近づけただけで痛みが走るような感覚になります。 / 私の体験では、刺されると6時間から8時間くらいはドクンドクンと脈打つような痛みのリズムが続きます。痛みと同時に刺された箇所を中心に腫れが広がります。漫画で描かれる『たんこぶ』のようなものではありません。そして、腫れた箇所は熱をもちます。痛みが少しおさまると、腫れ上がったところの周りから強い痒みがあらわれます。(p67)」 //中略// 「ハチアレルギー(アナフィラキシーショック)が起きると、痛みや腫れ以外に、くしゃみ、鼻水、じんましんの症状が見られます。さらに、アレルギー反応が強いと呼吸困難、血圧低下、心臓機能の低下などの症状が出ます。こうなったら一刻も早く病院で手当をしてもらわないと大変なことになります。命にかかわるのです。『スズメバチに2度刺されたら死ぬ』と言われるのは、このような状態に陥ることがあるためです(p69)。」

日本だけでなく著者がフィールドワークした世界のスズメバチについても紹介される。写真も多く、ハードカバーで上質な紙が利用されたぜいたくな造りの本。

(以下、「目次」章立て) プロローグ 繰り返されるスズメバチをめぐる事故 / 1 都会のスズメバチ研究【採集・飼育・観察の日々】 / 2 日本のスズメバチ【種類と生活史】 / 3 スズメバチの問題は解決するか? / 4 世界のスズメバチに会いに行く / 特定外来種ツマアカスズメバチの侵入 / スズメバチとの共生【匂いをもって匂いを制する】 / エピローグ がんばれ!都会派・コガタスズメバチ / あとがき / 主な参考文献・引用文献 / スズメバチ名索引

2018年10月8日にレビュー

世の中への扉 おどろきのスズメバチ

世の中への扉 おどろきのスズメバチ

  • 作者: 中村 雅雄
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2013/06/28
  • メディア: 単行本



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