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『世界植物探検の歴史: 地球を駆けたプラント・ハンターたち』 キャロリン・フライ著 原書房 [生物学]


[ヴィジュアル版]世界植物探検の歴史: 地球を駆けたプラント・ハンターたち

[ヴィジュアル版]世界植物探検の歴史: 地球を駆けたプラント・ハンターたち

  • 作者: キャロリン・フライ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/07/25
  • メディア: 単行本


「プラントハンター」たちの働きを軸に、過去と将来に思いを馳せることもできる

今日、海外の珍しい植物(鑑賞用、食用)に、(原産地ではない土地にいながら)触れることができる。無数の植物や種子が世界中をめぐっている。そもそも、それには始まりがあり、その背後には「プラントハンター」たちの働きがあった。

その目的は、単純に綺麗な花を庭に植えたい、身近に鑑賞したいという願いに応えるばかりではなく、国家的な利益がからんだりもした。他国との競争に勝利するため、彼らはその先棒を担いだ・・・。本書は、そうした「プラントハンター」たちの物語だ。

「プラントハンター」たちの個々のプロフィルやその働きを知ることができる。その中には、リンネ、フンボルト、ジョゼフ・バンクスといったビッグネームから、彼らに派遣されたさほど有名でない人物たちもいる。

「プラントハンター」として、本書で最初に名が挙げられるのは紀元前15世紀のエジプトのファラオ、ハトシェプスト女王。それから、今日、絶滅が危惧される野生植物の保全のために奔走する人物たちまでが語られる。

綺麗な花の挿絵がたくさん出ている、いかにも原書房の本である。ビジュアル本として、見て、読んで、益を得、過去と将来に思いを馳せることもできる。

(以下「目次」)1 プント国から運ばれた植物 / 2 東洋の植物を西洋へ / 3 東洋のスパイスを求めて / 4 薬草園の誕生 / 5 カロルス・クルシウスとチューリップ・バブル / 6 植物採集を職業に変えたトラデスカント一族 / 7 ヨーロッパに持ち込まれた異国の植物 / 8 カール・フォン・リンネと植物の命名 / 9 サー・ジョゼフ・バンクス / 10 南米の植物採集 / 11 フランシス・マッソンの南アフリカ探検 / 12 地球の反対側の豊かな植物 / 13 北アメリカの野生種 / 14 ヒマラヤのジョゼフ・フッカー / 15 東洋の宝探し / 16 サトウキビの犠牲 / 17 インドを支配した貿易会社 / 18 植民地の試み / 19 中国からインドへ運ばれたチャノキ / 20 世界にまかれたゴム産業の種 / 21 ランへの情熱 / 22 芸術の新ジャンル / 23 稀少植物の保護 / 24 現代の植物園の役割 / 25 現代のプラントハンター / 26 植物界の侵略者 / 27 未来のための種子の備蓄 / 28 気候変動の影響

2018年10月6日にレビュー

以下、抜粋(『24 現代の植物園の役割』から)

植物園の役割は数世紀にわたって変化してきた。イタリア・ルネッサンス時代の初期の植物園は、薬草を育て医師が生薬について学ぶ場として造られた。18世紀の壮麗な大規模庭園は外来種の展示が目的だったので、キュー王立植物園のバーム・ハウスをはじめとする温室では航海家や探検家が遭遇した熱帯の原生地が再現された。19世紀に植民地で発展した植物園は科学的な実験拠点になり、同じ生育環境の植物をさまざまな国から集めて、ヨーロッパで商品にするために栽培した。植物園自然保護国際機構(BGCI)の事務局長サラ・オールドフィールドは「庭や植物園は、それらが造られた時代と、当時の一般的な思想を反映する」と述べている。 / 1987年に設立されたBGCIは、植物園に資源や知識を提供し、絶滅が危惧される野生植物の保全を手助けする組織だ。現在、ロンドンのキュー王立植物園に位置するの本部は、世界120カ国2500ヵ所の植物園が手がける環境保全活動に協力している。(以下省略)

Botanic Gardens Conservation International
https://www.bgci.org/japan_jp/index/

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