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〈 「未解」のアフリカ: 欺瞞のヨーロッパ史観〉石川 薫・小浜裕久著 勁草書房 [外交・国際関係]


「未解」のアフリカ: 欺瞞のヨーロッパ史観

「未解」のアフリカ: 欺瞞のヨーロッパ史観

  • 作者: 石川 薫
  • 出版社/メーカー: 勁草書房
  • 発売日: 2018/01/16
  • メディア: 単行本


読む者は瞠目すること必定

たいへんポップな表紙デザインなので、軽い気持ちで読みはじめたが、驚くほどの重量感である。さくさく読み進めることができるが、「未知の」アフリカのどんどん深いところへ入っていく。アフリカと聞くとハダカの原住民が飛んだり跳ねたりする「蒙昧」のイメージがあるが、「知識が低く道理に暗い」のは自分の方であると気づかされた。しまいには圧倒される思いであった。

アフリカは、「未開の、野蛮な」大陸(the darkest continent)と呼ばれてきた。それはヨーロッパにおいて〈地図がまだない未知の部分を「未知の」、すなわちdarkと呼んだ〉ところからくる。ところが、実際には、ヨーロッパ人が到来する前からアフリカには“数々の王国、帝国”がありイスラム世界とつながってたいへん開けていた。次のような記述もある。〈アスキア・ムハマド治世下のトゥンブクトゥーの様子についてレオ・アフリカヌスはこう記している。「トゥンブクトゥーには、数多くの判事、博士、イスラムの聖職者がおり、国王が彼らに高給を与えている。国王は知識人に敬意を払っている。現地では北アフリカからの書籍がたいへん売れており、書籍は他のいかなる商品よりも利益の大きい商いである。(神々の大陸アフリカ・イスラム教の興りと大陸への伝播)〉。

第1章で、アフリカに対する通念・常識が覆される。世界地図(メルカトル図法)が示され、我々の意識にあってアフリカ大陸が矮小化されていることが明らかにされる。ロンドン-ケープタウン間とロンドン-東京間はほぼ等距離にあるが、地図上では前者の方がはるかに短い距離に見える。つまりは、それだけアフリカが大きな大陸であるということである。その大陸に中には、多くの言語からなる人々が住み、多様な文化を築いていたのである。

そこへ、野蛮なヨーロッパ人が押し寄せる。〈ある世界史の教科書は、ルネサンスが多くの点でイスラム文化の恩恵を受けていたことはよく知られており、「三大発明」と呼ばれるもののうち少なくとも羅針盤と火薬(火砲)は中国起源で、それがイスラム教徒を通じてヨーロッパに伝えられと説明している。問題はそれを改良して実用的な武器にしたのは中国でもイスラムでもなくヨーロッパだったということだ。それは大航海時代以降のヨーロッパのアジア・中南米進出と植民地化を見れば明らかである。〉その最初の犠牲とされたのが、ヨーロッパに近いアフリカであったというわけだ。もし、日本が「極東」の地になかったなら、そして、火砲を独自に製造できなかったなら、アフリカと同じ運命をたどったであろうという記述もある。

企画から校了まで15年かかったというが、それだけの時間がかかっただけのことはあるという内容だ。元外交官である著者の見聞も興味深い。世界(史)におけるアフリカとは何か、何だったのか、アフリカの今後は・・それらの疑問「?」の解に、読む者は瞠目すること必定である。

2018年3月2日にレビュー

新書アフリカ史 (講談社現代新書)

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  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/07/18
  • メディア: 新書



アフリカ音楽の正体

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  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2016/05/16
  • メディア: 単行本



中世イスラムの図書館と西洋―古代の知を回帰させ,文字と書物の帝国を築き西洋を覚醒させた人々

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  • 出版社/メーカー: 近代文藝社
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  • メディア: 単行本



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