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『ボクが逆さに生きる理由 誤解だらけのこうもり』 中島宏章著 ナツメ社 [生物学]


ボクが逆さに生きる理由 誤解だらけのこうもり (Natsume-sha Science)

ボクが逆さに生きる理由 誤解だらけのこうもり (Natsume-sha Science)

  • 作者: 中島宏章
  • 出版社/メーカー: ナツメ社
  • 発売日: 2017/10/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


コウモリ好き好き大好きという愛情が伝わってくる

本書は、「哺乳類全体の20%に相当する約1300種(そのうち日本に生息するのは35種)」いるという翼手目(コウモリ目)の本。ちなみに哺乳類を「種類の多い順に」、いくと、げっ歯目(ネズミ目)、翼手目(コウモリ目)、トガリネズミ目となり、「これらトップ3だけで哺乳類全体の7割以上、すなわち4000種を占め、一番種類の多いネズミ目は約2300種で全体の40%を占めている」という。しかし、その中で、飛翔できる(滑空するだけでなく)のはコウモリだけである。

本書でなにより実感できるのは、それほど数多くいるというコウモリについて無知であったことだ。薄暮の世界をひらひらはらはら飛び回るコウモリについて、本書はたいへんよく知ることのできる本である。書籍タイトルにある「逆さ」の問題もそうだが、「超音波」の問題もある。超音波を利用して暗闇を飛び、餌を捕獲するのであれば、その目はどうなっているのか。見えるのか見えないのか。手の構造は、どうなっているのか。鳥の翼、羽とどうちがうのか。そのスピードは、ひらひらはらはらに見られる知恵は、捕食者である猛禽類等との関係は・・・。また、「野生下のコウモリの最高齢記録は・・41歳という」、その「驚異的な長寿」の秘密についても記される。

本書はNatsume-sha Scienceシリーズの一冊である。その編集方針によるものなのだろう。単に、コウモリの生態について知るだけでなく、関連する科学的情報も多く示される。飛ぶに際しての「揚力」の問題や「超音波」による「エコーローケーション」、コウモリと感染症の話題では「ウイルス」が、「スーパー高度な休眠方法」として「トーパ」が取り上げられる。また、「生態系サービス(Ecosystem service)についての記述もあり「コウモリの経済的価値はアメリカだけで2兆円!」などという見出しもある。

著者は、「面白くて面白くて、それこそ夜型(というか、コウモリ型?)人間になっていき、コウモリの世界にどんどんハマって」、「気づけばいつの間にか会社を辞め、コウモリをメイン」の写真家となった方(巻頭8ページカラー写真あり。科学的専門的知識は監修者に頼っている)。著者の、コウモリ好き好き大好きという愛情の伝わってくる一冊である。

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