*京大式DEEP THINKING』 川上浩司著 サンマーク出版 [教育・学び]
《東大教養学部「考える力」の教室》の向こうをはった本?
宮澤 正憲著《東大教養学部「考える力」の教室》の向こうをはった本ということであろうか。こちらは《京大式》をタイトルに挙げている。どちらも、「考える」ことに、焦点を絞っての著作だが、こちらは、「深く考える」ことを主眼としている。
最初に手にしたのは、《東大》の方。だが、ほとんど読まずに図書館に返却した。なぜだか分からない。多量に図書を借り受ける中、面白そうな本から先に読み始め、後回しになって、返却の日が迫り、期間延長して読むほどの内容ではないように感じて、そのまま返却してしまったのだろうと思う。内容をしっかり読んでいないので、比較など到底できるものではないが、こちら《京大式》は、なんとなく返しがたく、期間延長して読み、「分かったような分からないような」感をもちながら、手元において睨めっこをしている。きっと、手放しがたいモノがあるのだろう。少なくとも自分にとっては、と思う。
「分かったような分からないような」感があるというのは、ふつうのビジネス書のように、成功するには、コレとコレといった箇条書き的分かりやすさで記述されていないことから来るものであるように思う。だからと言って、内容が無いわけではない。掴みどころが無く感じられるだけに、かえって、オオモノを釣りあげたかのような感覚がある。と、言っても、人によりけりで、分かっている人には、ナーンダという内容であるにちがいない。
ひどく大雑把にまとめると・・・、結果よりも、「考える」プロセスを重視しなさい。「考える」ことの価値を認めなさい。出来合いの解決策・提案を鵜呑みにするのではなく、批判しつつ自分で考えなさい。そのようにして自分で解決策をアレコレ考えるうちに、おのずと深く「考える」力が身についていく。そうするに際して、鉛筆という筆記具は、たいへん有用な道具である。白い紙と鉛筆は、パソコンによるメモなど比べものにならないほど、多くのアイデアを現前させるものとなる。どうぞお試しあれ・・・というものだ。
著者は、不便益(不便だからこそ得られる益と豊かさ)の研究者であり製品開発者である。もしかすると、本書が通常のビジネス書のような箇条書き的明解さに欠けているかに見えるのも、不便益のすすめ、なのかもしれない。読者は、本書を読むことそのことにおいても、思考力を鍛えることができる。
2018年1月2日にレビュー
『哲学な日々−考えさせない時代に抗して』=野矢茂樹・著
http://bookend.blog.so-net.ne.jp/2015-11-14