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『1 リーマンと数論 (リーマンの生きる数学)』黒川 信重著 共立出版 [数学]


リーマンと数論 (リーマンの生きる数学)

リーマンと数論 (リーマンの生きる数学)

  • 作者: 黒川 信重
  • 出版社/メーカー: 共立出版
  • 発売日: 2016/12/08
  • メディア: 単行本


リーマン没後150年の現在からリーマンの数学およびその後への影響を振り返る全4巻シリーズの一冊

(以下は、著者による『はじめに』からの抜粋)

本書は 第Ⅰ部「簡単なゼータ関数」、第Ⅱ部「リーマンと先達」、第Ⅲ部「リーマンの影響」から成る。

第Ⅰ部では、まず、ゼータ関数とはどんなものかを簡単な場合に体験していただく。単純なものではあるが、関数等式もリーマン予想も証明される。それらは本来のリーマン予想の解決にも重要となるであろう。そのような未来を考慮した結果、ここに取り上げるゼータ関数は通常の入門コースとは全く違ったものとなった。

第Ⅱ部は、リーマンの数論研究およぼリーマンに至る数学の流れについて解説する。リーマンの画期的なところは、ゼータ関数を複素関数論から扱ったところにある。その結果、ゼータ関数の複素零点が素数分布と深く関係していることを発見したのであり、リーマン予想にも至ったのである。

第Ⅲ部は、リーマンのゼータ関数論の19世紀、20世紀、21世紀における影響を述べる。とくに、リーマン予想の証明されている二大ゼータ関数族である「セルバーグゼータ関数」と「合同ゼータ関数」について解説する。前者は、リーマン面やリーマン多様体のゼータ関数であり、20世紀中頃にセルバーグが発見した。まさに、リーマンの研究していた空間に関するゼータ関数である。しかも、リーマン予想の成立まで確認できることは、リーマンの「空間論・多様体論」と「ゼータ関数論・リーマン予想論」という二つの研究が百年後に合流したものとして感銘深い。後者は、有限体上の代数多様体やスキームのゼータ関数であり、20世紀にグロタンディークが中心となって膨大な研究が行われた。これは、リーマンが示唆していた「離散多様体」のゼータ関数と見ることができるであろう。実は、前者のセルバーグゼータ関数においても「離散版」を考えることができて、それはグラフのゼータ関数などとなる。

このような、ゼータ関数論の多方面にわたる発展は、リーマン予想を中心とするリーマンの研究から流れてきたものである。

幸いなことに、本来のリーマン予想は、1859年に提出されて以来157年になる現在まで未解決である。21世紀においても導きの糸になることを期待したい。


そして、『あとがき』冒頭には、こうある。「リーマンと数論の関わりを見てきますと、数学の大いなる流れというものが、リーマンを通して体現されているという思いが強く致します。本書によって、この感じが幾分なりとも読者に伝わっていれば幸いです」。

目次 第Ⅰ部「簡単なゼータ関数」(1章 有限ゼータ関数、2章 行列の整数ゼータ関数、3章 行列の実数ゼータ関数)、第Ⅱ部「リーマンと先達」(4章 オイラー以前、5章 ディリクレ、6章 リーマン)、第Ⅲ部「リーマンの影響」(7章 19世紀、8章 20世紀、9章 21世紀) あとがき 索引

2017年2月3日にレビュー

素数の音楽 (新潮文庫)

素数の音楽 (新潮文庫)

  • 作者: マーカス デュ・ソートイ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/09/28
  • メディア: 文庫


リーマンは人見知りの激しい極端に控えめな性格の持ち主であり、5歳年少の友人デデキントとの深い信頼関係によって何とか日々の生活を送っていた、という意外な面もある。ちなみに、デデキントはリーマン没後、『リーマン全集』のまとめ役をつとめ、そこに最初の「リーマン伝」を書き下ろしている。(「シリーズ刊行にあたって」からの抜粋)

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リーマンと数論という観点からは1859年11月の短い論文が一編のみ、というのが実状です。リーマンはその手書き6ページの論文を書くにあたって大量の計算を行いました。論文に報告されているものだけでも、ゼータ関数の二種類の・・・(「あとがき」からの抜粋)

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