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『怪書探訪』古書山 たかし著 東洋経済新報社


怪書探訪

怪書探訪

  • 作者: 古書山 たかし
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2016/10/21
  • メディア: 単行本


古書・怪書への熱意が目の前で化学変化を起こす

ユーモラスな『まえがき』にひかれるままに読みはじめた。本章に入って冒頭、トーマス・マンの署名本購入のいきさつについて著者は熱く語る。「私にとってトーマス・マンがドストィエーフスキィ、バルザックと並び、最も敬愛する作家」だという。その言葉から“ドクトルマンボウ”こと北 杜夫を想起しつつ、「ヘンテコな本を紹介する本にしては、マトモに過ぎるのではないか・・」とさらに読み進めると、栗田信の著書『醗酵人間』の発する「こけつかきつきつ(鳴き声)。ここまでおいで。甘酒進上」でとうとう爆発した。朗読して家人に聞かせようとしたが、ひいひい涙声の大笑いの発作をおこして、とても読めない。そんなくだらない本があったのだ。また、それに多大のカネを投じる蛮勇に感服しつつ、さらに読み進めると、こんどは福田恆存旧蔵『サミュエル・ジョンスン英語辞典・初版』のはなし。結婚資金を投じてまで入手したかどうかは、読んでのお楽しみ・・という具合に、愛書家にとって共感、羨望etcを感じさせる怒涛の連続。

一サラリーマン「書痴」を自称する著者は、専門家の論議に「屋上屋を架す」こともできるほどの識者でもある。知は知を呼び込み、アレとコレとが繋がる。高尚な論議からくだらない話まで多々論じられるが、それでもやはり、本書の一番のウリは、著者の古書・怪書への熱意だろう。それが目の前で化学反応を起こす。黒岩涙香『幽霊塔』の話で、著者は次のように記す。《宮崎駿も乱歩や私と同様、人生の最も深いところで『幽霊塔』と化学反応を起こしていたのであり、また同時に、私が幼き日々、最も影響を受けた三つの作品、『幽霊塔』『未来少年コナン』『カリオストロの城』はいずれも同じ先祖から分かれた三人の兄弟だったのである。こうしてみると、私の精神はまさに『幽霊塔』によって基底され、涵養されたのだといえるだろう》。

2016年11月26日にレビュー
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著者があげたS・ジョンソンの言葉 「思慮分別は人生を安全にするが、往々にして幸せにしない」


サミュエル・ジョンソン伝 1

サミュエル・ジョンソン伝 1

  • 作者: J.ボズウェル
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 1981/05
  • メディア: 単行本





ジョンソン博士の『英語辞典』‐世界を定義した本の誕生

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  • 作者: ヘンリー・ヒッチングズ
  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2007/12/21
  • メディア: 単行本


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