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『古典について,冷静に考えてみました』岩波書店 [文学・評論]


古典について,冷静に考えてみました

古典について,冷静に考えてみました

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2016/09/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


12人の執筆者による「古典」を“めぐる”旅

進んで読まれ、読むように勧められ、実際に読まれてきた「古典」、人類の遺産であるかのように時間・空間を隔てて読み継がれるものとみなされてきた「古典」、オーラのかかった言葉である「古典」、そうした「古典」を“めぐる”論考集成。12人の執筆者から成る。それにしても、「古典」の実体とはいったい何か・・・。

『はじめに』、次のようにある。《本書は古典を読むことの意義について目新しい答を出そうとしていない。・・中略・・そもそも本書は古典をめぐる問いかけは今に始まったことではないことを提示することで、性急な答を求めずにもう少し余裕をもっていただきたいとの願いを、あくまでも個人としての書き手が個人としての読み手に宛てたメッセージからなる。古典を鼓吹するにせよそうでないにせよ、問題はもっと多角的な様相をもっていることを紹介したいのである》。岩波書店の紹介文にも《古典をめぐるさまざまな問いかけに真摯に向き合い、古典の深み、広がり、その豊かさを問い直す。急いで答えを出そうとしないで、まずはじっくりと考えてみよう》とある。

本書を読むにあたって、「性急」に「急いで」答えを得ようとするのはマチガイのようである。気持ちに余裕がないと、とても「冷静」でなどいられなくなる。「古典」「コテン」は、たった二文字、三音だが、デカイ相手である。西洋における、日本における、中国における、ソレは、捉えられ方がチガッテ当然だ。執筆者各自が、自分の専門領域との関わりで明らかにしようとする「古典」を “めぐる”旅に読者はつきあう必要がある。気の短い人は、難しいにちがいない。古典を「無用の長物」という人はいないだろうが、長物であることはマチガイない。そのことを実感できる本である。執筆者たちと共に、ぐるぐる“めぐる”うち、古典のなんたるかが、じわっと分かってくる本であるように思う。

目次

はじめに ーーすぐに答の出ない問 逸見喜一郎

Ⅰ 「古典」の意義について、考えてみました
中国における古典 川合康三 
古典とクラシックーーことばとことがら 塩川徹也

Ⅱ 「古典」の成り立ちについて、考えてみました
ゲーテの「世界文学」とヨーロッパの「古典」 高橋義人
イギリス・ロマン主義時代の「古典」観 鈴木雅之
ドイツの夢ーー「国民」と「古典」 田邊玲子
『源氏物語』はいかにして「古典」になったか 今西祐一郎

Ⅲ 「古典」の多様さについて、考えてみました
マニ教の「宇宙図」--東西交流のしるし 吉田豊
スラブ世界の古典図ーー言語の古層へ 佐藤昭裕
古典演劇という幻想ーー生きて流動するもの 竹本幹夫
小学における「古典」--あらゆる学問の基礎 花登正宏

おわりにーー古典教材談義 身崎 壽

2016年11月25日にレビュー

ラテン語のはなし―通読できるラテン語文法

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  • 作者: 逸身 喜一郎
  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 2000/12
  • メディア: 単行本



風姿花伝・三道 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

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  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川学芸出版
  • 発売日: 2013/09/15
  • メディア: Kindle版



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