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『マタギ奇談 狩人たちの奇妙な語り』工藤 隆雄著 山と渓谷社 [民俗学]


マタギ奇談 狩人たちの奇妙な語り

マタギ奇談 狩人たちの奇妙な語り

  • 作者: 工藤 隆雄
  • 出版社/メーカー: 山と渓谷社
  • 発売日: 2016/09/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


マタギの生活、山の民俗を知ることができる

奇談=怪奇談と思ったが、「奇」=フツウでない と解せばいいようだ。本書をとおし、マタギの生活、山の民俗を知ることができる。それは都会人とは、ちがう。ある意味、フツウではない。「奇」である。狩猟に関し、「罠は卑怯」という言葉もある。獲物がとれれば、それでいいというわけにはいかない。山の神様の意向もある。オキテがあり、オキテに従わなければ、仲間からハズサレル。環境に関する考えも都会人とはちがう。白神山地の世界遺産指定は、マタギにとっては、愚かなことだった。そもそも、彼らの生活を奪った。本書をとおし、少なくともマタギの立場からいって、全くのマチガイだと感じた。行政にたずさわる都会人のアタマ・デッカチの判断と、白神の山々の樹木、動物を知り尽くした人々との考えはチガッテ当然だが・・・、そのことを本書をとおし、アタマではなくカラダで実感した。本書最終章にあたる「老マタギと犬」は、著者自身の本書執筆にからむ老マタギとの出会い、その相棒の犬についての記述だが、くりかえしくりかえし読みたくなる文章だ。ほのぼのと哀切で失われたものの大きさを抱きしめたくなるような話だ。

「マタギというのは、ただ獲物を獲るだけではなく、山の隅々までを知ってたいせつにする人のことをいうのです。もし、好き勝手に獲物だけを獲っていたら、今頃、白神には生きものがいなくなっていたと思います。だからマタギは、ただのハンターと違い、白神の番人だと思っていますよ」

「ええ、その犬も父が死んですぐに死にました。犬もがっかりしたんでしょうね。餌を出しても食べませんでした。そして、父の葬式の最中にあとを追うようにして死にました。仲がよかったから、父の墓の横に埋めてやりました。今頃、彼岸で以前のように山のなかを歩いているんじゃないでしょうか」

2016年11月18日にレビュー

マタギに学ぶ登山技術 [ヤマケイ山学選書]

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  • 作者: 工藤 隆雄
  • 出版社/メーカー: 山と溪谷社
  • 発売日: 2008/03/19
  • メディア: 新書



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