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「本」をめぐる新たな見取図―本の学校・出版産業シンポジウム2016への提言 [マスメディア]


「本」をめぐる新たな見取図―本の学校・出版産業シンポジウム2016への提言(2015記録集)

「本」をめぐる新たな見取図―本の学校・出版産業シンポジウム2016への提言(2015記録集)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 出版メディアパル
  • 発売日: 2016/09
  • メディア: 単行本


「書店の現在と可能性」、新人作家・漫画家業界参入の現状、などなどたいへんリアル

書籍帯に「書店の現在と可能性 実践する経営者の視点から」とある。ネット書店、電子書籍の台頭によって、リアル書店が苦しんでいる。そうした中、生き延びるため店舗リニューアルを図りなどする。その工夫・苦労話を聞くことができる。ほかにも、漫画業界において新人作家がこれまでと違う仕方で参入・活躍している様子を知ることもできる。ほかに、「本との出合い方」に関するシンポジウム、山梨県、長野県塩尻市の図書館と書店の共生に関するシンポジウムなどあり、関係者の声を聞くことができる。現場からの声は、たいへんリアルで生々しい。

2016年11月17日にレビュー

特別講演
書店の現在と可能性―実践する経営者の視点から
共催●リード エグジビションジャパン

経営の厳しさが強調される書店業界だが、これからの書店のあるべき姿を追い求めて模索を続けている経営者も多い。 そんななかでも、従来の枠に囚われない大胆な試みに挑戦し続けている若手経営者3氏を招き、現状認識から将来展望、そして業界への提言まで、前向きにこれからの書店像を語ってもらう。

コーディネーター●星野渉(文化通信社常務取締役編集長)
パネリスト●嶋崎富士雄(文教堂グループホールディングス代表取締役社長)、松信健太郎(有隣堂常務取締役)、佐藤友則(総商さとう代表取締役社長・ウィー東城店店長)


第1分科会
「著者の発掘・育成・発表」の新たな形

かつて雑誌などの紙媒体が担っていた著者の作品発表の場は、メディアの変革に伴い、さまざまな広がりを見せている。本分科会では、主にコミックの世界において、既存の紙媒体の編集者が行う仕事の枠にとらわれずに、新たな著者をプロデュースし続ける2名のプロデューサーを招き、著者発掘・育成・関係づくり、プロモーションなど、今後の「本」づくりに必要な視点・スキルを聞く。

コーディネーター●梶原治樹(扶桑社)
パネリスト●菊池健(トキワ荘プロジェクト)、佐渡島庸平(コルク)

第2分科会
リニューアルは書店に新たな命を吹き込むか?

市場の変化によって書店経営が厳しくなる中、「移転」「増床」「スクラップアンドビルド」など立地や規模を変えることで存続を図る事例は少なくない。その一方、既存の立地・規模を大きく変えず、“新しい書店”に変化する「リニューアル」を選択する書店も存在する。「その街で書店を営み続けるための選択肢」としてのリニューアルの可能性を、実際にリニューアルを実行した書店経営者によるディスカッションを通じて考える。

コーディネーター●和氣正幸(BOOKSHOP LOVER)
パネリスト●長﨑健一(長崎書店)、山崎幸治(一進堂・CHIENOWA BOOK STORE)


コーディネーター●梶原治樹(扶桑社)
パネリスト●菊池健(トキワ荘プロジェクト)、佐渡島庸平(コルク)


第3分科会
「本との出会い方」~読書情報の変化とこれからの読者像

読者と本の出会い方が多様になってきている。従来、読者が本と出会う環境は書店店頭や新聞書評が主だったが、いまではAmazonレビューなどのWeb情報や、TwitterなどのSNSで多くの読書情報が発信されている。リアルな場での読書会や本に関するイベントも盛んだ。当分科会では、WebメディアやSNS、そして書店の現場から、媒体の枠を超え、読者と本との出会い方を探っていく。

コーディネーター●松井祐輔(『HAB』発行人/本屋「小屋BOOKS」店主)
パネリスト●大西隆幸(ブクログ)、久禮亮太(久禮書店〈KUREBOOKS〉店主)、仲俣暁生(編集者、文筆家、『マガジン航』*編集発行人*)


第4分科会
図書館と書店でひらく本のまち

図書館、 書店、地方出版、そして…。知の地域づくりを担うアクターがつながると、まちには何が起きるのか?県民投票で決める「贈りたい本大賞」など、図書館と書店合同で読書イベントをしかける山梨県と、「信州しおじり本の寺子屋」はじめ、ユニークな実践で知られる塩尻市からゲストを迎え、本のまちの広がりを熱く楽しく議論する。

コーディネーター● 柴野京子(上智大学)
パネリスト●伊東直登(塩尻市立図書館)、齊藤秀(山梨県立図書館)、須藤令子(朗月堂)

以下、第一分科会での佐渡島庸平氏(コルク) の発言
(p80-82)

そもそもインターネットの時代というのがまだ黎明期なので、それも変わってくかもしれませんね。まずは、これは文明の進化の問題ですけど、基本的には、人間の作るものは「時間消費型」と「時間節約型」というふうに、分けることができるんです。例えば家電を例にとると、パナソニックとナショナルって、昔分かれていましたが、特にナショナルって白物家電で有名なブランドで、冷蔵庫とか洗濯機とか、時間節約型の商品を作っていました。いっぽう、ソニーが作っていたウォークマンは、時間消費型の商品で、無駄な時間を過ごさせるものです。時間節約のものっていうのはブランドになりにくくて、時間消費のものっていうのはブランドになりやすいんですよ。だからパナソニックよりもソニーのほうが、ブランドとして、今、業績が悪くても、まだなぜか強い雰囲気で居られるんですね。

コンテンツというのは、やはり時間消費です。それで、グルメ情報とか芸能情報とか性情報みたいなものがコンテンツとして強いんだけども、そういったジャンルでなかなかブランドを取れないのは、直接的に欲望に訴えかけているからで、本能的な時間消費ではないんですよね。むしろ時間節約に近い。

先ほど言った『テンプリズム』というファンタジーって、読む理由なんてどこにもないので、むちゃくちゃ時間消費のものです。逆に、これにハマらせることができると、すごくロイヤルティーの高いブランドになり得ます。出版業界とかテレビ業界が産業規模が小さい割に世間で価値を持っているのは、時間消費ビジネスだからです。

インターネットが現われて、スマートフォンのアプリが増えてきている中でも、いまは、人の生活を便利にするもの、どちらかというと時間節約的なものが、どんどん成功しているんです。時間節約的なところってお金の回収見通しが立ちやすいから、そこに対して投資が付くようになり、そういう仕組みがどんどんできるようになる。

今のところあるゲームというものも、例えばゲーム会社の成功した人たち、『パズドラ』の人たちに聞くと、「どいういうふうにして30秒だけゲームをやらせるか」みたいなかたちで、細切れ時間を集めているわけです。スマホっていうのは、どんどん時間が短くなっていって、Vineだったら6秒だし、ユーチューブだと「5分ぐらいしか見られません」とか、「基本90秒ですよ」みたいなかたちになっている。今まである、例えば映画だと90分とか、本だと3日かけて読むみたいなものが全部、これから90秒とかのコンテンツ以外が消費されない、シェアされないというふうになってきているんです。

インターネット上では、3時間使うようなコンテンツをデリバリーしていく仕組みを、実はまだ誰も開発できていないんです。今後は、それを開発した人と、そこに当てはまってくるクリエイターというのが、時間消費の分野において、インターネット上での本当の覇者になるんじゃないかと思います。

ディズニーランドというのは、むちゃくちゃ時間消費させるわけじゃないですか。ディズニーランドの中で、ジェットコースターで90分待ったって、みんな、いらいらしながらも楽しむわけです。これは最高の時間消費です。乗っていられる5分間ではななくて、待っている90分も時間消費としてOKとさせていて、「これぐらい1日で使ったから、最後、お土産買って帰るぞ」という、最高の時間消費ビジネスというのをディズニーランドはつくり上げている。おそらく、これはネット空間でもつくれるはずです。

そのネット空間でつくるための設計思想を誰が持つのか。そして、そのためのエンジニアを抱えるのは誰なのか。・・・・


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