『動物言語の秘密 暮らしと行動がわかる』 ジャニン・M. ベニュス著 西村書店 [動物学]
次に、動物園に行くのが楽しみになる本
本書は《動物観察に役立つツールとなる。この本を読めば、アマチュア行動学者も本格的な観察ができるようになるだろう。著者のベニュスは動物たちのことばと、見落としがちだが観察するべき場面について教えてくれる。(中略)本書にのっている動物の行動をどれかひとつでも覚えておけば、次に動物園に行ったときには、まったく違った体験ができるはずだ(本書に寄せて;アレクサンドラ・ホロウィッツ博士)》と、あるがホントだ。
本書は、「入門編」「観察編」の2部から成る。全体で509ページあり、写真ではなく、挿絵(Juan Carlos barberisによるペン画、点描)が多数もちいられ、挿絵なしのページは、3㍉角程度の文字で30行x35文字で構成されている。「観察編」の各動物については、「動物園/自然界で見られる行動」リストと「行動早見表」も付されている。ぎっしり詰まった内容である。
動物好きにはたまらない本だ。アフリカゾウの「飲水行動」に関する記述をすこし引用してみる。《サバンナではゾウが水場に近づくと、たいていの動物はゾウに場所をゆずる。ゾウが堂々とした態度で鼻を少しゆすれば、それだけでキリンもバッファローもサイも、ライオンさえ後ろに下がってゾウに順番をゆずる。// 動物たちの中には、ゾウが水を飲んでくれなければ、順番を待つどころかまったく水が飲めないものもいる。干ばつが激しくて川が干上がってしまったときにも、ゾウは牙を使って川の地下に眠る水を掘り出すことができるのだ。そのときは数mの深さの穴を掘り、砂の上に水がゆっくりとにじみ出てくるのを待つ。そして、そこへ来るまでにどれだけ長距離を歩いてきたときでも、どれだけ喉が渇いているときでも、水に混ざった砂が沈んで水がきれいになるのを辛抱強く待ち、それから時間をかけて飲む。ゾウが去ると、他の動物がその穴に集まってきて水を飲む。サバンナの動物にとって、ゾウの掘る「井戸」は気候が厳しい時期の命綱となっている。ゾウが減少しつづけて絶滅してしまえば、非常に困った事態になるだろう》。
目次
本書に寄せて/ はじめに
入門編 動物園の歴史と役割、動物の行動の背景を知る
生まれ変わった動物園(今も昔も変わらぬ動物への思い/ 動物園の歴史/ 動物園の役割/ 安全網としての役割/ 動物園の動物が教えてくれること/ 人々の協力を得るという役割/ 動物園の将来)
動物たちの行動(行動の背景:行動とは何だろう?/ 不死への挑戦/ 生息地の役割/ 相手の事情を理解したうえで観察する)(基本的な行動:移動/ 採食/ 飲水行動/ 排泄/ 体を清潔にする/ 体を乾かす/ 体温調節/ 隠れ家/ 睡眠/ あくびと伸び/ 捕食者への対応)(社会行動:社会生活のタイプ/ 個体同士の関わり方/ コミュニケーションの方法/ 日常的な信号の意味とその見分け方-動物の発するメッセージとその手段-反対の法則-表情/ 友好的な行動/ 闘争行動-闘争を避けるためのかけ引き-かけ引きが役に立たないとき/ 性行動/ 育児行動)(飼育下における行動:異常行動の原因/ 個人でできること)
観察編 動物の行動の意味を読みとる
ゴリラ/ライオン/アフリカゾウ/サバンナシマウマ/クロサイ/キリン/ダチョウ/オオフラミンゴ/ナイルワニ/ジャイアントパンダ/クジャク/コモドオオトカゲ/ハンドウイルカ/カリフォルニアアシカ/ハイイロオオカミ/ハクトウワシ/カナダヅル/シロイルカ/ホッキョクグマ/アデリーペンギン
2016年10月11日にレビュー
次は、Juan Carlos barberisによる挿絵が用いられている本
Call of the Wild (Short Classics)
- 作者: Jack London
- 出版社/メーカー: Steck-Vaughn Co
- 発売日: 1991/06
- メディア: ペーパーバック
Secret Language of Animals: A Guide to Remarkable Behavior
- 作者: Janine M. Benyus
- 出版社/メーカー: Black Dog & Leventhal
- 発売日: 2014/04/15
- メディア: ペーパーバック