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『編集 -悪い本ほどすぐできる 良い本ほどむずかしい-』豊田 きいち著 パイインターナショナル [文学・評論]


編集 -悪い本ほどすぐできる 良い本ほどむずかしい-

編集 -悪い本ほどすぐできる 良い本ほどむずかしい-

  • 作者: 豊田 きいち
  • 出版社/メーカー: パイインターナショナル
  • 発売日: 2016/07/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


出版・メディアの世界、その動きに興味のある方は読んでソンはない

本書は、小学館の編集者であった豊田きいちに、「編集者の心得」の執筆を依頼し、快諾を得た成ったもの。しかし、「執筆は大変なので、インタビューをまとめてくれるなら」ということから、2012年2月から12月までの10回にわたるインタビューをまとめたもので、インタビューアーは、久野寧子。当時、豊田は86歳。

しかし、実際にインタビューに臨むと、久野が「口を挟む隙もなく」、豊田の「特別講演」がいきなり始まったという。「毎回、流れるように続く、『豊田節』の隙を狙って」、いくつか他愛のない問い(「どんな人を尊敬されてますか」等)を発しても、「今度、お教えしますよ」と話してくれず、ついに教えてくれたのはインタビューの最終日だったという。そして、それから、約1ヶ月後、まとめあげられたものを、自ら校正をすることもなく豊田は亡くなってしまう。つまり、豊田の遺稿ともいえる本書の実質的な「執筆」者(原稿用紙のマスを埋めたの)は久野であり、久野は本書の「取材・構成・執筆」者となっている。

「著者」の若々しさを感じつつ本書を読んだ。イキのいい文章を読み進めるうち、その経験、登場する人物などから、「著者」の実年齢がどんどん気になりだし、『編集ノート』(あとがき)を見て、「著者」がすでに故人であることを知った。イキのいい感じは、文章に「豊田節」が生きているから、豊田の話す音声のリズムが、再現され躍動していることからくるように思う。

書かれている内容については《 編集者は「連想」しなくてはいけない。他者と「差別化」された者にならなければならない。「語彙」が豊富でなければならない。文章は自分の文章でなければつまらない。言葉は「音楽」であり、文章は「絵」である。いい文章とは、「面白い文章」、面白い文章とは「分かりやすい文章」である。カタカナは「漢字」である。センテンスは短く、句読点は、多いほうがいい。どこにでも行ける五叉路に立つのではなく、この道しか行けないという横丁(言葉)を選ぶべきである・・・》と、久野がまとめている。その実質的、具体的中身については、「本書を、どうぞご覧ください」である。《昭和24(1949)年から、定年退職するまでの40年間、ずっと、ひとりの編集者として生きてきた》豊田から学べるものは多い。(個人的には特に、岩波赤版『古典文学大系』に対抗して、小学館が企画出版した『日本古典文学全集』51巻の話しが面白かった)。

『編集ノート』は、実質4部に分かれている。その一つには、『少年サンデー』昭和34年創刊当時のもよう、豊田きいち編集長のことを記した漫画家(代表作『スポーツマン金太郎』)寺田ヒロオの文章が掲載されている。

本書全体を読みとおして感じるのは、豊田ヘの深い敬愛の念である。編集にたずさわる方だけでなく、出版・メディアの世界、その動きに興味のある方は読んでソンはないように思う。

2016年10月2日にレビュー

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編集者、それはペンを持たない作家である 私は人間記録として、自分の感動を多くの読者に伝えたかった。

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