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『パブリックライフ学入門』ヤン・ゲール/ヴィアギッテ・スヴァア著 鹿島出版会 [建築など]


パブリックライフ学入門

パブリックライフ学入門

  • 作者: ヤン・ゲール
  • 出版社/メーカー: 鹿島出版会
  • 発売日: 2016/07/14
  • メディア: 単行本


『パブリックライフ学』の見地から人間と都市を観察する方法を学ぶ

『パブリックライフ学』とは何か?の疑問から手にした。「入門」とあるので、どんな学問であっても、それなりに理解できるであろうと読み始めた。

著者ヤン・ゲールは、「建築学部で公共空間に関する研究、教育に携わり、コンサルタントとして」世界の諸都市の「都市政策に関わ」り、「人間のためにふさわしい都市をつくること」をめざしてきた人物。

『パブリックライフ』とは「学校の行き帰りやバルコニーで、座る、立つ、歩く、自転車に乗るなど、建物の間で起き得るあらゆる活動のこと」「私たちが外に出て目にすることができるすべての出来事のこと」。『パブリックスペース』とは、「街路、小路、広場、ポラードなど、人為的な環境を構成するすべてのもの」。それらの間に良好な関係をデザインしようとするのが『パブリックライフ学』のめざすところと言えそうだ。

《訳者解題》には、「パブリックライフ学とは、日々変わりつづける都市の状況をつぶさに記録することで、そこから新しい生活の価値を見つけ出し、都市の魅力をかたちづくっていくための実践学」と説明されている。

本書は、「過去50年間に開発されたパブリックスペースとパブリックライフの調査手法を紹介するもの」。「これらの技術を用いれば、都市空間や利用実態について、より深く理解することができ、ひいては空間をよりよく機能的に変えられる」。その「分析手法のカギとなるもの、それが『観察』」。その具体的方法と実践例が本書に示されていく。

動物学の見地から人間とその行動を観察する方法をデズモンド・モリスから学びうるように、『パブリックライフ学』の見地から人間と都市を観察する方法をヤン・ゲールから学ぶことができそうだ。


■目次
・序文 (ジョージ・ファーガソン)
・まえがき

・1 パブリックスペースとパブリックライフーーそれらの相互作用
・2 誰が?何を?どこで?
・3 カウント、マッピング、トラッキング、その他のツール
・4 パブリックライフ研究の系譜
・5 先人たちの手法から学ぶ:リサーチノート
・6 パブリックライフスタディ実践編
・7 パブリックライフスタディと都市政策

・注釈
・参考文献
・訳者解題

2016年9月11日にレビュー

マンウォッチング〔文庫〕 (小学館文庫)

マンウォッチング〔文庫〕 (小学館文庫)

  • 作者: デズモンド・モリス
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2007/03/07
  • メディア: 文庫


マクミラン・オンライン辞典によると、observeという言葉の意味は、「何かを発見するために注意・注目して、誰か・何かを、見たり調査したりすること」とされています。そして、注意・注目して見たり調査したりするということが、まさに平凡なシーンから有用な知見を得るための鍵なのです。都市での「ライフ」を観察しようとする人が真っ先に気づくことは、パブリックスペースの複雑で入り乱れたもののなかから有用な知見を得るためには、体系的に進めることが重要だということでしょう。観察される人は、ただ使い走りをしているだけかもしれませんが、その途中で道を歩く人を眺めたり、デモ行進に目を奪われたりもするでしょう。これら全体を見つめることによって、すべてが興味深い現象になるのです。

一般的に観察者は、いわゆる「壁のハエ」のようにニュートラルであるべきです。主役ではなく脇役に徹し、見えない非参加者として出来事には加わらずに全体像を捉えなければなりません。調査の種類によって、観察者はさまざまな役割を持つことになります。役割とは、まず正確さが求められるカウントの記録係があります。記録者は同時に、人びとの年齢層などを判断し、分類する役割も果たします。ここでは評価者としての能力が求められます。ときに、記録係には分析的な視点が求められることもあります。どのようなタイプの情報が求められているかについて、熟練した見識や経験的な勘や感覚を使って判断しながら、詳細な観察日記をつけることもあるのです。

観察者としての眼は鍛えることが可能です。当然ながらプロとしての眼と素人の眼には違いがありますが、原則的に誰でも都市の「ライフ」の観察者となりえます。熟練したプロの観察者は一目で新たな情報を捉えることができますが、初心者はスキルを磨き、新たな眼で世界を見て、ツールを慎重に使うことが求められます。ただし観察者の形態的な側面に対する理解については、人によって大きな差があります。調査結果の考察や説明が求められる際には、空間デザインの素養を持つ観察者でなければなりません。

(以上、1 パブリックスペースとパブリックライフ それらの相互作用  p015-016から抜粋)  
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