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『新版 漢方の歴史』 小曽戸 洋著 大修館書店 [医学・健康]


新版 漢方の歴史 (あじあブックス)

新版 漢方の歴史 (あじあブックス)

  • 作者: 小曽戸 洋
  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 2014/09/20
  • メディア: 単行本


新知見を得られる楽しい本

1999年に発行された書籍の(2014年に改訂された)新版。これまでずっと読み続けられてきた本である。権威ある書籍と考えていいのだろう。少なくとも信頼性の高い本と考えることはできるのだろう。著者プロフィールを見ると、博士号をふたつ所持していることがわかる。医学博士であると同時に文学博士でもあるという。「北里大学東洋医学総合研究所医史学研究所部長」「日本医史学会理事長」とあるので、東洋の「医」の「歴史」を語るに、たいへんふさわしい方であるにちがいない。

『はじめに』、言葉へのこだわりが示される。「東洋」、「漢方」という言葉について記される。「漢」とは何か、「方」とは何かから説かれる。そのこだわりから、出版社はどこかと見ると「大修館書店」である。諸橋轍次編纂「大漢和辞典」の版元である。なるほどまさに本書は、大修館書店から出るにふさわしい本に思える。中国と日本をつなぐような本である。

《中国には約三千年、日本には半分の千五百年にわたる伝統医学の歴史がある。十六世紀にはポルトガルから南蛮医学が伝わり、次いで十七世紀初にはオランダから蘭方(和蘭医学)が伝わったが、それでも十九世紀半ばの明治維新まで、日本の医学文化は、基本を中国に負う伝統医学が中心であった。なお、日本漢方は昭和期に入ってから形成されたといい、『傷寒論』を主軸とした方証相対主義(古方流)に限る向きもあるが、それは日本伝統漢方の全体像ではなく、そのような考えでは日本漢方の多様性は論じられまい。日本漢方は平安時代の『医心方』に遡り、鎌倉・南北朝・室町時代を経て、江戸時代を通じて培われたものにほかならない。江戸時代、日本の漢方は独自の発展を遂げ、清朝のそれを凌ぐ展開をみせた。その点からすると、「漢方は中国を越えた中国系医学」という言い方も可能かも知れない》という記述もある。

一般向けの著作である。漢文や中国の歴史に興味のある方にとっては、新知見を得られる楽しい本であるように思う。《殷王朝が史実として存在したことが認められるようになった。そのきっかけとなったのは、実は漢方薬「竜骨」だったのである》という記述が、甲骨文字の発見とともに記されていたりする。未知の興味深い記述のつづく楽しい本である。少なくとも、評者にとっては、そうである。

2016年9月8日にレビュー

大漢和辞典 全15巻セット 別巻『語彙索引』付

大漢和辞典 全15巻セット 別巻『語彙索引』付

  • 作者: 諸橋轍次
  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 2000/05/10
  • メディア: 単行本


目次

はじめに――東洋医学と漢方

第一章 中国医学の形成
  甲骨文字の発見と漢方薬
  扁鵲伝説
  医師の分類
  医書の分類

第二章 よみがえる古代医学の遺物
  二千余年前の貴婦人と漢方薬
  出現した古代の医学書
  馬王堆医帛の復元研究
  新出の医学史料

第三章 神農伝説と『神農本草経』
  神農伝説
  『神農本草経』と本草
  本草学の継承と展開

第四章 『黄帝内経』と陰陽五行説
  黄帝と『黄帝内経』――『素問』『霊枢』『太素』『明堂』
  陰陽五行説と医学
  『難経』

第五章 張仲景の医学
  張仲景伝説
  張仲景方
  『傷寒論』
  『金匱要略』
  漢方が効く秘密
  華佗伝説

第六章 六朝隋唐医学と日本
  魏晋南北朝の医学書
  千年ぶりに発見された『小品方』
  日本への医学の伝播
  隋唐の医学書
  遣唐使の開始
  「大宝律令」医疾令
  平城京での動向
  平安京での医学
  『医心方』の成立

第七章 宋の医学と日本
  宋の医書出版
  朝鮮の医書出版
  宋版医書の渡来
  『孫真人玉函方』の出現
  鎌倉南北朝の医学

第八章 金元明清の医学と日本
  金元医学の新展開
  明清代の医薬書
  入明医師の活躍
  日本最初の医書出版と禅僧
  曲直瀬道三の登場

第九章 江戸時代の医学
  曲直瀬玄朔の手腕
  徳川家康と医療
  古活字版医書の盛行
  日本に帰化した中国人医師
  日本漢方の独自化
  後世方派の様相
  古方派の出現
  折衷派の人々
  幕末明治の巨頭・浅田宗伯
  考証医学の開花

第十章 日本から中国へ
  日本に目を向けた中国人
  医籍の還流
  現存する漢方古書の数
  衰退から復興へ

あとがき
漢方関連年表
和漢薬の来歴
主要書名・人名索引
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