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『 3D地形図で歩く日本の活断層 』柴山 元彦著 創元社 [地理学]


3D地形図で歩く日本の活断層

3D地形図で歩く日本の活断層

  • 作者: 柴山 元彦
  • 出版社/メーカー: 創元社
  • 発売日: 2016/07/25
  • メディア: 単行本


時に、大災害の可能性もあるとはいえ、その恩恵に浴させてもらっているチッポケな存在が人間なのだ

活断層は怖いもので、活断層と原発事故がタッグを組んだら世界最強(恐)と思っていただけに、書籍・帯に記された「活断層は、けっして怖くない!」にたいそう惹かれた。実際のところ、《地震を引き起こす怖いものであるかのように思われている》活断層ではあるが、《その割には、どういうもので、どのような影響があるのかはあまり知られていない》。著者は、《活断層について全く知らない方、何となく不安に思っている方にも、その仕組みや特徴、私たちの生活との関わりを分かりやすく解説したいと思い、本書を執筆した(『はじめに』)》と記している。

本書には、34の活断層が紹介されている。残念なことに、評者宅近くの危険度の高いとされる活断層の掲載はない。しかし、そもそも本書では、特定の活断層の地震発生率やその影響、そして避難対策について論じるものではない。そうではなく、(活)断層がわれわれに、もたらす恩恵についてもっぱら言及している。それは、生活の場を提供し、風光明媚な景観をつくり、都合のよい移動の経路をもたらし・・・といったものだ。読んでいくと、千年、万年に数度の大災害の可能性もあるとはいえ、その恩恵に浴させてもらっているチッポケな存在が人間なのだということを実感できる。

著者は、当初、活断層を機会あるごとに訪れ観察していたが、そのうち「出かけなくても地形図を眺めれば断層による地形が見えてくることが、しだいに分か」るようになったという。本書には、地形図だけでなく、3D地形図も用意され解説がなされていく。著者から、地形図上に活断層を見分ける手ほどきを受けることができる。たとえ本書に、掲載がないとしても、自分の家の近くの活断層とその特徴を見分けることもできるようになるにちがいない。

カラー印刷で写真も多数掲載され、各地の街道、温泉、名所についての記載もあり、読んで楽しい。

●日本の活断層34
01 泉郷断層(北海道/石狩低地東縁断層帯)// 02 青森湾西断層(青森県/青森湾西岸断層帯)// 03 寒河江‐山辺断層(山形県/山形盆地西縁断層帯)// 04 観音寺断層(山形県/庄内平野東縁断層帯)// 05 棚倉西・東断層(茨城県/棚倉構造帯)// 06 丹那断層(静岡県/北伊豆断層帯) // 07 静岡‐小淵沢断層(静岡県/糸魚川‐静岡構造線)// 08 糸魚川‐静岡断層(新潟県/糸魚川‐静岡構造線)// 09 赤石断層(長野県/中央構造線)// 10 跡津川断層(岐阜県/跡津川断層帯)// 11 阿寺断層(岐阜県/阿寺断層帯)// 12 根尾谷断層(岐阜県/濃尾断層帯)// 13 養老断層(岐阜県/養老‐桑名断層帯)// 14 柳ヶ瀬断層(滋賀県/柳ヶ瀬断層帯)// 15 比良断層(滋賀県/琵琶湖西岸断層帯)// 16 花折断層(滋賀県~京都府/花折断層帯)// 17 五月丘断層(大阪府/有馬‐高槻断層帯)// 18 生駒断層(大阪府/生駒断層帯)// 19 上町断層(大阪府/上町断層帯)// 20 諏訪山断層(兵庫県/六甲‐淡路島断層帯)// 21 安富・土万・大原断層(兵庫県/山崎断層帯)// 22 伊賀断層(三重県/木津川断層帯)// 23 多気断層(三重県/中央構造線)// 24 根来断層(和歌山県/中央構造線)// 25 池田断層(徳島県/中央構造線)// 26 石鎚断層(愛媛県/中央構造線)// 27 長者ヶ原断層(広島県/長者ヶ原‐芳井断層帯)// 28 筒賀断層(広島県/筒賀断層帯)// 29 大竹断層(広島県/大竹‐岩国断層帯)// 30 菊川断層(山口県/菊川断層帯)// 31 西山断層(福岡県/西山断層帯)// 32 日奈久断層(熊本県/日奈久断層帯)// 33 人吉断層(熊本県/人吉盆地南縁断層帯)// 34 鹿児島湾東縁・西縁断層帯(鹿児島県/鹿児島湾東・西断層帯)

2016年8月28日にレビュー

大地の動きをさぐる (岩波科学の本)

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  • 作者: 杉村 新
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1973/08/28
  • メディア: 単行本



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