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『 明治・大正・昭和の化粧文化―時代背景と化粧・美容の変遷 』ポーラ文化研究所 [民俗学]


明治・大正・昭和の化粧文化―時代背景と化粧・美容の変遷

明治・大正・昭和の化粧文化―時代背景と化粧・美容の変遷

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: ポーラ文化研究所
  • 発売日: 2016/06
  • メディア: 単行本


化粧・美容という観点で見えてくる歴史も興味深い

ポーラ文化研究所の新刊案内には《明治維新以降、日本人の化粧は、伝統的な化粧から西洋文明の化粧を取り込み、模倣し、また、それまで培ってきた日本独自の化粧意識との融合をはかりながら、近代化の道を走るように進んできました。明治以降、121年間に大きく変化した化粧文化について、15期に分けて、各時代の社会像や化粧・美容の状況を解説しています》とある。

「15期に分け」たというその時代の区切り方への興味がひとつにはあって手にしたのだが、化粧・美容の本というにしては、思いのほか図版等がないので驚く。巻頭口絵・写真として、14ページが備えられているのみで、服飾、化粧(法)などの歴史的図版は本文中ひとつもない。実質的には、歴史的記述に満ちた本で、まずは『時代概要』の記述があり、次いで、『政治』、『生活』、『文化』、『女性』、『服装』、『髪型』、『化粧/美容』と説明がなされていく。

『はじめに』には《 本書は、化粧と女性に関わる明治時代、大正時代、昭和時代の各年に起きた事象を年表に編纂した『近・現代化粧文化史年表』の副読本としえ編纂したものです。年表に記載された事象がどのような時代背景のもとで生じ、どのような変遷をたどったのかを年表記載にそって補完、解説しています。// ・・中略・・ // 明治以降、121年間に大きく変化した化粧文化について、新たな発見や理解の進展の役に立てれば幸いです》とある。

視点が異なれば、見えてくるものも違ってくるが、化粧・美容という観点で見えてくる歴史も興味深い。管見ながら、ひとつ発見した(と思える)点は、女性の社会進出と化粧・美容は大いに関係するということだ。また、社会的であろうとする人ほど、それへの関心は高まるということ。その点で、ひとつ引用してみる。《女性の洋装の先駆者となったのは、明治4年にアメリカに留学した、津田梅子、永井しげ子、山川捨松、上田てい子、吉益より子の5人の女性たちである。アメリカ留学時に、着ていたのは振袖の和服であった。アメリカに上陸当初は、同行の世話役であるアメリカ公使夫人が振袖を賞賛して、洋服に着替えさせなかった。しかし、留学女性たちは、振袖を着て大勢の見物人にかこまれ好奇の目にさらされることを嫌い、洋服着用を希望したのである》。これは分かりやすい。面白いのは次である。《一方、男性などの洋装化に、いち早く反応したのは、遊里の女性たちであったという。中山千代著『日本婦人洋装史』によると、・・中略・・遊里の洋装は、新聞などで報道され、遊女たちにとっては、重要な宣伝衣裳だったといえる》。そして、それに反し、《この時期、一般女性の洋装化については、関心が持たれなかった。洋装は文明開化の先端的流行であったが、異文明に対する拒否現象もはげしかった。・・》とつづく。因みに、本書の記述をとおして、評者は、はじめて、留学女性のひとり山川捨松が後の大山巌夫人となったことを知った。これも、本書ならではの、「化粧・美容という観点」に立ってはじめて見えてくるものなのかもしれない。

記述は、簡潔明瞭で、歴史のおさらいをするにもたいへんいい本に思う。

2016年8月27日にレビュー

近・現代化粧文化史年表/明治・大正・昭和の化粧文化―デジタル年表 デジタルブック 時代背景と化粧・美容 (<CDーROM>)

近・現代化粧文化史年表/明治・大正・昭和の化粧文化―デジタル年表 デジタルブック 時代背景と化粧・美容 (<CDーROM>)

  • 作者: ポーラ文化研究所
  • 出版社/メーカー: ポーラ文化研究所
  • 発売日: 2016/02
  • メディア: 単行本


津田梅子: 科学への道、大学の夢

津田梅子: 科学への道、大学の夢

  • 作者: 古川 安
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 2022/01/21
  • メディア: 単行本



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