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『知の教科書 フランクル』 諸富 祥彦著 (講談社メチエ) [心理学]


知の教科書 フランクル (講談社選書メチエ)

知の教科書 フランクル (講談社選書メチエ)

  • 作者: 諸富 祥彦
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/01/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


人生の秋に、そこはかとなくはかなさを感じている人は、まず真っ先に・・・

何度か挑戦しているのだが、読み難さを感じる本だ。たぶんフランクルの心理学(ロゴセラピー:意味中心療法 ; 実存分析)の概説・入門とするかフランクルその人の冷徹な伝記とするかにしておけば、これほど読み難くはないのではないかと思ったりする。これも、「たぶん」ではあるが、著者には、既刊のフランクル入門書(『フランクル心理学入門―どんな時も人生には意味がある』コスモスライブラリー)がある。アマゾン・レビューをみると概ね良い評価を得ている。それを、さらに一般向けにわかりやすくをモットーに、フランクルその人とその人生から形成された彼の心理学と、その著作の紹介を一度にしようとしたのが本書なのだろう。そこには、著者のフランクルへの多大なる愛情もかさなって、ちいさな器(講談社選書)に盛り込む内容とするには、多すぎたきらいがあるように思う。

評者自身にとって、フランクル関連の著作を読むのは、本書が、初めてである。そうではあっても、『夜と霧』の概要くらいは噂に聞いている。そして、その心理学の一番肝要なところも知っている。著者既刊書・表題から引用するなら、「どんな時も人生には意味がある」、どんな悲惨で、過酷で、無意味に思えるような時でも、人生に意味を見いだすことは可能で、いき続けることはできる・・というものだろう。なまじっか知っているだけに、なおさら、読み通しにくいのかもしれない。それでも、フランクルの幼児体験、その天才ぶり、「16歳のフランクルと65歳のフロイトの文通は2年にも及んだ」こと、アドラーとのことなど興味深く読んだ。また、「読書療法としての効果を持」ち、多くの苦悩する人々から「圧倒的な支持を得て」、読んだだけで「立ち直った、自殺するのをやめ」たという結果を得ているのは、フランクルと森田正馬(「森田療法」の創始者)が双璧というのも、はじめて知った。

「フランクル」で(検索し、アマゾンで流通している)既刊書籍を見ると、好(高)評価を多数得ているのは、フランクル自身の著作(翻訳書)である。入門書・解説書の類は、そうでもない。これも「たぶん」だが、直接フランクルの著作に親しみ、その「読書療法」の効能をすくなからず経験した人にとっては、たとえ親切な解説書でもアリガタ迷惑のウルサイだけの本に思えてしまうのかもしれない。

フランクルは「人生で3度読む」本だという。3度とは、人生の意味を問う思春期、中年期、そして死の訪れを感じ始めた時だ。たいへん長い「序文」が用意されているが、その多くは「ミドルエイジ・クライシス」について記されているので、読者として想定されているのは、「思秋期」にある40-60代のようである。人生の秋に、そこはかとなくはかなさを感じている人は、まず真っ先に(フランクルの著作ソノ物を読む前に)本書を読むといいのかもしれない。

2016年8月25日にレビュー

フランクル心理学入門―どんな時も人生には意味がある

フランクル心理学入門―どんな時も人生には意味がある

  • 作者: 諸富 祥彦
  • 出版社/メーカー: コスモスライブラリー
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 単行本



夜と霧 新版

夜と霧 新版

  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2002/11/05
  • メディア: Kindle版



虚無感について  -心理学と哲学への挑戦-

虚無感について -心理学と哲学への挑戦-

  • 作者: ヴィクトール・E・フランクル
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2015/12/24
  • メディア: 単行本



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