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『地図の物語 人類は地図で何を伝えようとしてきたのか』アン・ルーニー著 日経ナショナルジオグラフィック社 [地理学]


地図の物語 人類は地図で何を伝えようとしてきたのか

地図の物語 人類は地図で何を伝えようとしてきたのか

  • 作者: アン・ルーニー
  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2016/07/15
  • メディア: 単行本


「地図」がコノヨウナモノとなるまで

ナショナルジオグラフィックならではのキレイな写真・図版で、陳腐な表現だが、見ているだけで楽しい。

カバー・袖に記されている言葉を引用してみる。《 マンモスの牙に描かれた2万5000年前の地図は、製作者の住む範囲を表したものだった。人間の行動範囲が広がるにつれ、地図に描かれる世界も広がっていく。各地で作られた地図からは、当時の人々が世界をどのように見ていたのかが読みとれる。縮尺を厳密に測るようになり、世界地図に発展し、現在では衛星から私たちの住む世界を捉えるまでになった。// 地図には、現実世界を写した地図だけでなく、神話の世界を描いた地図、神話と現実が重なる地図などさまざまなものがある。紙にインクで描くのみならず、貝殻や植物で作られた地図もある。何を用いて、どのように表現するかは、その地域の世界観を鮮やかに示している。// 地図がどのように変遷し、どのように世界を写し出し、また何を目的にしてきたのかを140余点の豊富な図版で読みとく 》。

最初の図版は、現存する最古の地図『マンモスの牙に描かれたパブロフ図』、最後は米航空宇宙局(NASA)による衛星画像。地図ともただの模様ともわからないところから始まり、地図とも模様ともわからないところで終わっている。その間(古来)、自分たちの住む世界を表現するために、距離、方位、縮尺といった考えを模様の中に取り込みながら、いわゆる「地図」なるものを発展させてきたわけだが、「地図」とはコノヨウナモノという現在の思い込みに至るまでを振り返る本といえるし、また、「地図」とはイカナルモノかを考えさせられる本である。

2016年8月16日に日本でレビュー

「知識」、「研究」、「第1~3の発見時代」(『知識の社会史2』から抜粋)
http://kankyodou.blog.so-net.ne.jp/2015-10-06


知識の社会史2: 百科全書からウィキペディアまで

知識の社会史2: 百科全書からウィキペディアまで

  • 作者: ピーター バーク
  • 出版社/メーカー: 新曜社
  • 発売日: 2015/07/17
  • メディア: 単行本



世界を一枚の紙の上に 歴史を変えたダイアグラムと主題地図の誕生

世界を一枚の紙の上に 歴史を変えたダイアグラムと主題地図の誕生

  • 作者: 大田 暁雄
  • 出版社/メーカー: オーム社
  • 発売日: 2021/12/17
  • メディア: 単行本


3 探検と領土拡大
探検とは旅の一種である。

探検は、アジアへの西回り航路を見つけようとしたコロンブスのように、明確な意図を持って行われることもあれば、単に冒険心から行われることもある。// 地図を描くための旅は、未知の場所であろうとなかろうと、ある意味、探検と冒険の旅なのである。もっとも、何が待ち受けているかわからない未知の場所への探検と、父祖の代から慣れ親しんだ海岸の探検は、まったくの別物だが。// 探検家や入植者にとって地図は二つの大きな役割がある。ひとつは、新たな土地を発見するための航海の手助けとなること。もうひとつは、発見したものや獲得したものを記録することだ。後者の場合、地図とは単にあるものを示すだけの存在ではなくなる。地図製作が、領有権を宣言する行為そのものになり、がらりと政治的な色合いを帯びてくるのだ。

4 世界観の変容
世界を表す地図は、人類の旅の広がりとともにその姿を変えていった。

その昔、人の生活圏は実に狭く、彼らが知り得たのは歩いて行けるところか、せいぜい船に乗って回れる範囲だった。ごく初期の世界地図を見ればそれがわかる。そこでは、自分たちの小さな世界を中心に据え、未知の領域は想像で描いているにすぎない。// ヨーロッパの世界観は、千年以上にわたって古代ローマの地理学者プトレマイオスの理論の上に成り立っていた。だが、15世紀以降、新たな地理上の「発見」が相次ぐ。まずはアメリカ大陸、そしてアフリカ南部、アジア、太平洋諸島、オーストラリアやニュージーランド、そして南極大陸というように。こうした世界の広がりがヨーロッパの地図の様式に変革を迫っていく。なにしろ従来のままでは、知っている世界をうまく描けなくなってしまったのだ。// そこで登場したのが三つの様式である。ひとつは東半球と西半球という二つの円で世界を表す地図。もうひとつは長方形や楕円形で世界を表す地図。残りひとつが、ゴアと呼ばれる何枚もの幾何学的な断片から成り、球面に張り付ければ地球儀が作れる地図だ。丸い地球を平面に描くとどうしてもひずみが生じる。このひずみを最小限に抑えるために、様々な投影法が編み出された。現代人が認識している世界の姿は、まさにこうした投影法によるものなのだ。



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