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『宗教社会学を学ぶ人のために』井上順孝・編 世界思想社 [社会学]


宗教社会学を学ぶ人のために

宗教社会学を学ぶ人のために

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 世界思想社
  • 発売日: 2016/04/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


宗教社会学を学ぶ人たちの標準的なテキスト:きちんと読めば、きっと新しい視野が開けるはず

副題に「宗教社会学の基礎理論 現代社会と宗教社会学」とある。序章では「ファジーな宗教社会学」を学ぶにあたって、「宗教社会学の考え方、視点についての基礎的な知識を得」、「現代社会の宗教状況の概要を把握する目を養う」ことを目指すよう勧められ、「何事も自分の身近な問題」と考え、机上の学びで終わらせないよう励まされている。

第Ⅰ部は、4章から成る。『宗教社会学の基礎理論』と題されている。

1章は「宗教社会学の源流」と題され、ウェーバー、ジンメル、デュルケムが立項されている。彼らの著作には「宗教現象を読み解くときに役立つ視点や概念がいくつも散りばめられている」とあり、「草創期の宗教社会学において、彼らが何を明らかにしようとしたかを、3人の代表的な著作を中心に概観する」とあって、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』//『宗教生活の原初形態』『自殺論』//『宗教』『貨幣の哲学』が挙げられている。

2章は「宗教社会学の周辺」と題され、「周辺分野の研究」が紹介されていく。①人類学からの影響 ②呪術論からの影響 ③心理学からの影響 が立項され、フレイザー『金枝篇』、モース『贈与論』、エルツ『右手の優越』、エヴァンズ=プリチャード『呪術論』、さらにフロイト、ユング、W・ジェイムズの論考が紹介され興味深い。

3章は「宗教社会学の展開」と題され、「アメリカにおける宗教社会学と機能主義の展開、宗教教団に関する理論などに焦点」があてられ、また「最近の認知科学や脳科学など」の新たな研究が紹介されている。①パーソンズの構造機能主義、②マートンの構造機能分析、③べラーの市民宗教 が章の前半立項されている。

4章「日本の宗教社会学」では、「日本における宗教社会学の受容と、日本社会の特徴に基づく研究について紹介」されている。①伝統宗教・民俗宗教の研究 ②民衆宗教研究と新宗教研究 ③スピリチュアリティ研究 ④「カルト問題」研究 が立項されている。柳田國男、原田敏明、森岡清美、井門富士雄、柳川啓一//中義能、中山慶一、鶴藤幾太//村上重良、安丸良夫などの名前が挙げられる。

5章から第Ⅱ部に入る。「第Ⅱ部は具体的な宗教の社会的展開に即して、宗教社会学的な視点からの分析や説明を行う。 第5章では、近代化が日本宗教に与えた影響を考えていく。近代国家の宗教政策、都市化、家族の変動、法的な条件がどのように影響したかを説明する。 第6章では、近現代の日本社会の変化とそれに対応する宗教の変化をみるときに最も注目される現象に焦点を当てる。新宗教の展開と活動の特徴、そして現代宗教をめぐる主要な社会的トピックをいくつか扱う。 第7章では日本の宗教状況をより広く世界的視野からみていく。現代世界の宗教分布を確認し、世界で起こっている宗教的トピックを扱う。 第8章では宗教についての情報があふれる一方の現代社会において、より的確な宗教情報を得るための注意点をあげ、宗教情報リテラシーという考え方について説明する(「序章」)」。

巻末、付録として、文献解題、基本統計、参考となるウェブ情報一覧、事項・人名索引が用意されている。

「あとがき」に「本書は宗教社会学を学ぶ人たちの標準的なテキストになるようにと考えて編集されたもの」とある。むずかしい点もあるが、論述の印象はたいへん明晰である。「きちんと読んでいただければ、きっと新しい視野が開けるはずと考えている」とあるので、きちんと読みたい。

2016年6月24日レビュー

《参考となるウェブ情報一覧》から
「宗教と社会」学会
http://jasrs.org/

日本宗教学会
文化庁文化部宗務課 「宗教年鑑」
総務省統計局 人口統計
外務省
NHK放送文化研究所 日本人の意識調査
統計数理研究所 日本人の国民性調査
宗教情報リサーチセンター
宗教文化教育推進センター

Pew Research Center

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