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「戦後初の北嶺千日回峰行者 叡南祖賢大阿闍梨」 善本社 [宗教]


戦後初の北嶺千日回峰行者 叡南祖賢大阿闍梨

戦後初の北嶺千日回峰行者 叡南祖賢大阿闍梨

  • 出版社/メーカー: 善本社
  • 発売日: 2022/12/20
  • メディア: 単行本



叡南祖賢(Enami Soken)は天台宗の僧侶である。昭和46(1971)年没。死後50年が経過している。本書は、(往年の小僧で)今や高僧となった祖賢の弟子たちが、師について語ったもの。オーラルヒストリーである。語っているのは表紙下部に示されている方々。ほかに『道心の人・叡南祖賢師ー師の銅像開眼式を迎えてー』と題する『大法輪』第55号・昭和63年・第8号掲載記事が転載されている。

それらから伝わってくるのはなによりも弟子たちの祖賢師への深い敬愛の念である。薫陶を受けた師父の厳しさと愛情を、思い起こすと語らざるをえないというやむにやまない思いである。

叡南祖賢は『ウィキペディア』に立項されている。そこに記されている内容の多くは本書から取られている。《サントリーの社訓「やってみなはれ」は、鳥井信治郎が比叡山を訪れて祖賢和尚に相談した時に、祖賢和尚が鳥井を励ました言葉が由来である》など出ている。

「比叡山の傑僧」と表紙にある。祖賢が勉学面、修行面、実務面で傑出した能力の持ち主であったことは本書全体から分かるが、特に興味深いエピソードとしては直木賞作家であり中尊寺貫主・天台宗大僧正であった 今東光 との一件からも分かる。昭和31年当時「天台宗は東と西で政治的に対立していた」という。東側で息巻いていたのが今東光である。比叡山での火災をめぐって、その責任を西側に取らせようと押しかけてきた今を祖賢は退散させる。納得させて、帰す。その後、二人は親しくなる。今東光という傑物を丸め込むのであるから、その傑物ぶりは半端でないことが分かる。

政界、財界など著名な人物たちも登場する。巻頭写真には今上天皇(浩宮徳仁親王)幼少時の姿が出ている。延暦寺行啓時の親王を案内する祖賢の姿も映っている。祖賢の魅力的な人格をしめす多くのエピソードとともに、当時の天台僧の師弟関係・弟子同士の関係がどのようなものか知ることができる。宗旨にかかわりなく、単なる読み物として楽しめると思う。

叡南祖賢
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A1%E5%8D%97%E7%A5%96%E8%B3%A2


この世に命を授かりもうして (幻冬舎文庫)

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  • 作者: 酒井雄哉
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2017/04/11
  • メディア: Kindle版



極道辻説法

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  • 作者: 今 東光
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1976/10/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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