「熟語本位 英和中辞典 新増補版」斎藤秀三郎著 岩波書店 [言語学(外国語)]
「英語を本気で読めるようになりた」ければ・・
翻訳不能といわれたJ・ジョイスの『フィネガンズ・ウェイク』を完訳した柳瀬尚紀氏推薦の辞書です。
「本気で英語を読めるようになりた」ければ、「この辞書の熟読を勧める。」と、氏は『辞書はジョイスフル』の中で述べています。
氏は、当該辞書を「高校時代、ふとんのなかにもトイレにも持ち込んで読んだ」そうですが、当時を振り返って次のようにも記しています。「筆者の場合、高校生や大学生の頃、この辞典のすごさは、のぞき見できたという程度でしかなかった。どうやらほんとうに理解できるようになったのは、翻訳の仕事を公にするようになってからである。」
氏は、当該辞書「序文にある『一見直チニ要領ヲ得ル訳語」のなんたるかをわかるには」翻訳者としての体験を相当積む必要があった、と記し、斎藤秀三郎の訳語は、古いようだが実は古くはなく、その理由は「日本語が生きている」からだ(第3章:血のかよった訳語をもとめて)とも記しています。
わたしは、1964年発行の当該辞書を持っています。外函は全面茶色にやけてしまいましたが、製本はしっかりしています。「英語を本気で読む」おつもりであれば、孫子の代まで残すつもりで購入するのも良いかもしれません。(但し、旧字旧かな表記で活字の組み方も親切なものではありませんので熟読するには相当の覚悟が要ります。)
因みに、著者斎藤秀三郎は、指揮者小澤セイジの恩師で謹厳の誉れ高い斎藤秀雄の父君です。
2006年1月18日にレビュー