「村の社会学 日本の伝統的な人づきあいに学ぶ」(ちくま新書)鳥越皓之著 [民俗学]
村の社会学 ──日本の伝統的な人づきあいに学ぶ (ちくま新書)
- 作者: 鳥越皓之
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2023/02/09
- メディア: Kindle版
「むら」については、あまりよく言われない。閉鎖的、排他的などが、その理由だ。しかし、その地域の気候・風土を反映し歴史によって醸成されてきた文化が、そこにはある。その共同体としての望ましい面が本書で明らかにされる。「むら」を旧弊なものとして安易に退けてしまっていいのだろうかと考えさせられる。
本書のタイトルに「村」とあるが、行政区分としての「村」を指す時「村人」は「ソン」というのだという。近代が「むら」に侵入して変化を求められても、変えられない部分がある。その変えられない部分、折り合いをつけながら暮らすところに光があてられる。
こんにち、自分の経験として「むら」における生活を語れる人はどれほどいるだろう。葬儀を葬儀社に丸投げして家族だけで済ますなどというのでなく、「むら」の住人が遺族に替わって通知を出し、あるいは届け、弔いにきた親族らに煮炊きして馳走し、弔いが終わったなら、今度は遺族がお手伝いをしてくれたむらの住人を接待して感謝をしめす。今から考えれば面倒くさいといえばメンドクサイが、そうした中には知恵が働いていた。いわば、保険である。
本書はそのような「むら」の再考・再興の書といっていい。
地域自治会の研究―部落会・町内会・自治会の展開過程 (関西学院大学研究叢書)
- 作者: 鳥越 皓之
- 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
- 発売日: 1994/02/10
- メディア: 単行本