「声とともに生きる豊かな人生: 50人のリカバリー体験記」解放出版社 [心理学]
当初書籍タイトルからボイストレーニングの本あるいは声の質を改善することで生きやすさを得るように助ける本かと思った。実はそうではなく「誰もいないのに声がはっきりと聞こえる・・」といった幻聴体験についての本である。経験談が多く示され、幻聴に苦しんでいる方にとって朗報となるにちがいない。 以下、森直作氏による「訳者あとがき」を引用する。
声というなじみのないテーマなのに、翻訳するほどに引きつけられた。もう全編が、愛と熱意と情熱にあふれているという印象だった。 / この声の運動で、実際に膨大な数の人が現実に救われていることがわかり、読むだけでも元気がもらえた感じがした。 / 筆者は、統合失調症は存在しないと主張している。これは一般にはすごく意外性があるかもしれない。しかし、この主張こそ、本書の中心的な魅力だと感じた。 / 声は現実であるとした点もすごく現実性があり、また声を拒絶するのでなく、受け入れる、というのも、意外そのものである。声についての、この意外性は、声の革命と言えるのではないだろうか。/ 本書の基本的な趣旨は、声や幻覚、妄想に悩む人々に、確実な希望を示すためであり、私の翻訳もこの趣旨に沿ったものである。 / 本書はすでに人気があり、実際に実用的で有効であるが、現行の精神科システムに苦言を呈しているため、本邦の精神科医では、お家の事情で、なかなか紹介しにくいと思われる。そのためなおさら、希少、貴重な本である。ちなみに本書の筆者は社会精神医学専攻の先進的な精神科医である。 / 内容は、多くの人に読んでもらえるように、読みやすく、わかりやすくをモットーとし、たとえたった一人でも、本書で元気になってくれたらいいな、と思っている。 / このたび、佐藤和喜雄先生が本書の監訳をお受けくださり、この出版に大きな弾みが加わり、とても喜んでおります。ヒアリング・ヴォイシズの活動を日本でリードされてきた、佐藤先生の、貴重なかつ大変な取り組みに、心より頭が下がる思いです。そして、校正から出版まで支えてくださった解放出版社の尾上年秀さんに感謝するというか、尾上さんが「これはいい企画だ」と目を留めていただけたからこそ、この本が日の目を見たのであります。心よりその慧眼を尊敬します。