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「世界の見方が変わる元素の話」ティム・ジェイムズ著・ 伊藤伸子訳 草思社 [物理・化学]


世界の見方が変わる元素の話

世界の見方が変わる元素の話

  • 出版社/メーカー: 草思社
  • 発売日: 2022/08/02
  • メディア: 単行本



「元素の話」とタイトルにある。「化け学の本で、個々の元素について詳しく示されているのであろう。どんなものか・・」と手にした。なによりも「世界の見方が変わる」に惹かれるところがあった。

読んでいてしばらくしてから、この本は元素周期表の成り立ち(どのように成立していったか)を示していることに気付いた。原題をみると、果たしてソウデアル。 How the Periodic Table ~となっている。 以下、ソレらしいところを抜粋してみる。

〈人間は数千年前から、化学物質をそれぞれの性質に従って分類しようとしてきた。/ このように、さまざまな考えが錯綜していたが、紀元前5世紀にエンペドクレスという名の人物が先人たちの考えを整理した。/ 驚くほど単純なこの表のおかげで、すべてが丸く収まった。/ 現在でも、水、火、土、空気を根源物質と考える人がいるが、まったく間違いだ。この四つが選ばれたのは、科学的根拠があったからではなく、平和を維持する駆け引きのためだった。とはいえ、まやかしに惹かれる人は一定数いるものだ。それがわかりやすい話であればあるほど、残念ながら、まやかしの類の人気は衰えない。 // 空気は窒素と酸素の混合物であり、水は水素と酸素の化合物であることをアントワーヌ・ラボアジェが発見すると、科学者たちはエンペドクレスの四元素の概念に見切りをつけ・・・/ もちろん他にも独自の方法で元素をグループ分けした化学者がいる。/ ヨハン・デーベライナー / ジョン・ニューランズ / 科学に対するメンデレエーフの最大の貢献は、実際に成り立つ周期表を世界で初めて考えだしたことにある。 / 1932年になると、元素が原子でできていて、その原子は陽子と中性子と電子から成り立っていることがわかった。だが、どの原子も同じ3種類の粒子からできているのに、これほどまでに異なる元素があるのはなぜだろうか? / ついに答えが出たのは、現代科学で最も重要な理論のひとつを物理学者が発見したときだった。その理論によって周期表の最終的な形が決まった。その理論とは、量子力学である〉。

著者は高校教師でユーチューバーでもあるという。たとえ話や元素発見にいたった逸話も多く示される。全体にユーモアが感じられ、かといってふざけ過ぎることもない。おかげで、お堅い化学の本を読み通すことができた。分かったような気にさせてもらっただけでも感謝である。

全体を通読して、「世界の見方が変わ」ったか?と問われれるなら、「変わった」と言っていいように思う。少なくとも周期表というものの見方を教えられた。それは世界を(自分の思いのなかで)再編する用意ができたということである。


Elemental: How the Periodic Table Can Now Explain (Nearly) Everything

Elemental: How the Periodic Table Can Now Explain (Nearly) Everything

  • 作者: James, Tim
  • 出版社/メーカー: Harry N. Abrams
  • 発売日: 2020/03/10
  • メディア: ペーパーバック



元素と周期表 改訂第2版 (ニュートン別冊)

元素と周期表 改訂第2版 (ニュートン別冊)

  • 出版社/メーカー: ニュートンプレス
  • 発売日: 2020/10/15
  • メディア: ムック



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