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「無敵の読解力」 佐藤優x池上彰(文春新書) [読書法・術]


無敵の読解力 (文春新書)

無敵の読解力 (文春新書)

  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2021/12/16
  • メディア: Kindle版


池上・佐藤両氏が、自分たちの読みの深さを披歴する本

稀代の読書家として定評のある池上・佐藤両氏の対談本です。「無敵の読解力」なる力があって、それを増強する方法について詳しく述べる本ではありません。「無敵の読解力」をもつ池上・佐藤両氏が、自分たちの読みの深さを披歴する内容です。

その読みをとおして、読者は「無敵の読解力」を身につけることができるにちがいありません。各章ごとに、テーマと関連する書籍が複数冊紹介されてまいります。その本を話題にしつつ、両氏がどのように話をすすめるかに着目すると、ある書籍が書かれた時代背景、著者の立ち位置・動機、それが古典的書籍であれば当時の世評(大多数の評価とそれに反する評価の両面に)気を配ることの必要性など学ぶことができます。別な言い方をすれば、文字として記されていることだけでなく「行間」に思いを馳せることの大切さとも言えそうです。

また、さらには出版された国の歴史・文化を知ることの大切さも学べます。そして、そのような知識の裏付け(教養)がないと表層的な読みしかできないという警告にもなっています。とりわけ『政治家の本棚(早野透著)』を引用しつつ著名な政治家たちの読書(法)についてたいへん厳しい言葉が発せられます。彼らはいわば反面教師、悪い手本として扱われています。その中には存命の方もいます。それは本書発行の意図からいくと当然で、糾弾されるべくして糾弾されたということになります。

池上氏が「はじめに」で、次のように記しています。〈どうも、このところ日本社会には反知性主義が蔓延しているのではないか。与野党を問わず数多くの政治家の発言から、知性の煌きが感じ取れません。教養という言葉は、どこに消えたのか。いくらなんでも、もう少し何とかならないものか。/ この焦燥感において佐藤優氏と意気投合し、日本そして世界をよりよく理解するための助けになる書籍を読み解いていこうということになりました。この問題意識のもとに本書が完成しました〉。

「おわりに」で、佐藤氏は以下のように書いています。〈本書では日本のエリートたちの読書法を具体的かつ批判的に検討して、「このような本の読み方を止めなくては日本の知力も国力も弱っていく」というメッセージを私は伝えたかった。重要なのは、アカデミズムで行われているテキスト批判、解釈学の手法を入口だけでもよいので政治家やビジネスパーソンの読書に取り入れることだ。その結果、日本人の読解力が飛躍的に向上するだろう〉。

2022年1月30日にレビュー




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