ひとり老後、賢く楽しむ 岸本葉子著 [エッセイ]
日々の暮らしを大切にして先々に備えたい
「老後に向けてあれこれ悩んだり不安に思ったりというのは、要するに知識、情報の不足からくるのだな。現状を把握して、とりあえずは直近の未来に備えればいいのだな。取り越し苦労は愚かであるし、愚かさかくるのだな。・・」などなど、考えつつ読み終えました。
当初、書籍タイトルから「ひとり老後を」趣味に没頭して「楽し」んでいるなどのちまちました内容かと思いましたが、予想に反し、著者は自分を変化させ、外に向かって開いていきます。自分ひとりの世界に引きこもったりはしません。その点で著者は、身近に接する老後を生きる方々から触発されます。プロフェッショナルからの教示に応じます。そのようにして自分を変化させ、外に向かって開いていきます。
本書表紙の図柄、タイトルの配置を見て、どこかで見た覚えがあります。しばらく考えて『暮らしの手帖』の本に同様のものがあったのを思い出しました。椿の絵は竹久夢二によるものです。著者のこだわりを示すものといっていいでしょう。著者は、住まいにもたいへんこだわりのある方です。テイストを大事にします。そうしたこだわりが生き生きした張りのある生活を生み出すものとなっているようです。それは、暮らし全体に対するこだわりといっていいように思います。
不安とは地面に足がついていないような感覚をいうのでしょう。本書を読んで、老後についての不安も同様だと感じました。日々の暮らしを地に足がつくようなものとしていくなら、老後をしっかり切り抜けていけそうです。良い教唆を受けました。
2020年2月29日にレビュー