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「銭ゲバ」ジョージ秋山 [マンガ学]


銭ゲバ 大合本 全4巻収録

銭ゲバ 大合本 全4巻収録

  • 作者: ジョージ秋山
  • 出版社/メーカー: ゴマブックス株式会社
  • 発売日: 2018/07/06
  • メディア: Kindle版



連載を一二度見たことがあるが、全巻を読んだのは、今回が初めてである。場面に1970年の大阪万国博覧会を示唆するものが登場する。当時の社会を著者なりに総括するとこういう漫画になるのだろう。学生運動華やかなりし頃、「革命」を暴力的に達成しようとする動きもあって、それが行き詰まり「内ゲバ」に発展したりしていた。高度経済成長のさ中、それまでの「革命」青年が、エコノミックアニマルに変貌した。資本主義を批判していた人間が、その手先になった。手にしたバブルの成果は、分裂した感情をもたらしたにちがいない。企業は公害をまきちらしながら、成長した。環境破壊は、近隣住民を苦しめた。しかし、その多くが公害企業に勤め先を見出していた。自分が直接被害者でなければ、企業の存続を望んだ。そうして、手にした薄給で善しとした。当時の社会とそこで生きる人間を極限まで誇張したのが「銭ゲバ」ではないか。バブルははじけ、「銭」を神様のようにみなし、幸福の源のように追い求めたあげくに手にしたのは虚しさである。しかし、それに気づいた人はイイ。気づかずに、いまだに追い求めている人がいる。社会の趨勢も変わっていない。「銭」にはそれなりの力があるからだ。聖書(のヨブ記)の引用が出てくる。秋山さんには(当方未読だが)「聖書」をテーマにした著作もある。聖書的・宗教的価値観があれば、「銭」は相対化され絶対神の立場を失う。人はプチ「銭ゲバ」から解放される。巻末、「銭ゲバ」の最期と、読者への突き放したようなコメントが強烈だが、それはプチ「銭ゲバ」を離れて生きるようにとの諭しであるのだろう。


舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

舊新約聖書―文語訳クロス装ハードカバー JL63

  • 作者: 日本聖書協会
  • 出版社/メーカー: 日本聖書協会
  • 発売日: 1993/11/01
  • メディア: 大型本



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