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「モモ」 ミヒャエル・エンデ著 (岩波少年文庫) [児童文学]


モモ (岩波少年文庫)

モモ (岩波少年文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/06/16
  • メディア: Kindle版



スタイルこそ児童文学だが、はるかに大きな内容を盛っている。「時間」とは、つまり、命のことだろう。命の源と呼びうるような存在から、モモという名の少女が遣わされて人々を死から救い出す物語。そう要約できるように思う。

これまで、(もちろん翻訳においてだが)原作を読んでこなかった。原作を読まずに何を“読”んできたかというと、ひとつは先ごろ(2017年に)亡くなった子安美知子さんの〈「モモ」を読む―シュタイナーの世界観を地下水として〉だ。そこでの論議は、単に『モモ』の解釈にとどまらず、人間の原初的な宗教性に及ぶもので、エンデの世界観・宗教観を開示してくれるものだった。

「モモ」を読む―シュタイナーの世界観を地下水として (朝日文庫)

「モモ」を読む―シュタイナーの世界観を地下水として (朝日文庫)

  • 作者: 子安 美知子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1991/01
  • メディア: 文庫



もう一つは、エンデ自身が“著者”の役を演じた映画『モモ』だ。エンデは、自著『はてしない物語』の映画化に関しては、その結末が著者の意にそわず、映画会社と訴訟騒ぎになったが、モモに関してはそうではなかった。十分納得し満足していたのだろう。しかし、今回、読んでみて、内容が映画と異なることに気づいた。たとえば、ジジの仕事のことだ。そうではあっても、内容のより深いところがどう表現されているかが、本当に問題とされているということなのだろう。

モモ [DVD]

モモ [DVD]

  • 出版社/メーカー: パイオニアLDC
  • 発売日: 2012/05/26
  • メディア: DVD


というわけで、エンデのバック・グラウンドと言える世界観とエンデ自身のお墨付きを得た映画を見て、分かったような気でいたのだが、それでもなお感動したことをお伝えしたい。児童文学の体裁を取り、わかりやすい言葉で物語っているが、内容は深い。時間とは命のことだろう。しかし、象徴的に表現されている命の問題が、象徴的に取り扱われているその取り扱いにおいて不明なところがある。つまり、「時間」認識において、エンデのそれを把握しきれていないということだ。しかしなお、把握できないでも、それが考慮に値するものであることは、つよく迫ってくる。さすが、名作である。

エンデと語る―作品・半生・世界観 (朝日選書)

エンデと語る―作品・半生・世界観 (朝日選書)

  • 作者: 子安 美知子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞社
  • 発売日: 1986/06
  • メディア: 単行本



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