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日本人よ! (伊丹十三選集 第一巻)岩波書店 [エッセイ]


日本人よ! (伊丹十三選集 第一巻)

日本人よ! (伊丹十三選集 第一巻)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/12/21
  • メディア: 単行本


ツカミ、ヒッパル力が並々でない

マルチタレントのハシリともいうべき伊丹十三の本。創作したもの、インタビュー、テレビ放映時の脚本のようなものが掲載されている。

後に映画監督として大活躍する素地が、本選集(第一巻)からもよく見える。好奇心旺盛だったのだなとつくづく感じる。世界にくすぐられることの多い人だったから、大衆をくすぐる術にも長じていたのだろう。ツカミ、ヒッパル力が並々でない。

「天皇日常」もそうだが、伊丹の切り口は、即物的だ。食す、排泄するといった人間だれしも、避けることのできないことがらを取り上げていく。誰しものことだから、分かりやすいし、オモシロイ。その切り口で、天皇様もまつり上げるのである。いわば、タブーへの接近といったところだが、陰湿なところがない。タブーも明るく取り上げられる。そうした、明るさは、全編を覆っている。

「人世劇場 神兵衰弱篇」、終戦直前の宮古島に駐屯していた方への聞き書きはスサマジイ。沖縄本島に出撃するアメリカ艦隊を見送るだけの島で、生き残ったのは四分の一、亡くなった人々の半数(だったかな)は自殺という話もでる。話し手の死にゆく仲間への観察、それを日常として語るどうということない語り口ゆえに、かえって悲惨さが際立つ。

日本の古代史、日本文化について多く記されている。チンパンという中国の秘密結社の話も出る。いまの若い、戦争を知らない、右よりの影響受けている人々は、自虐史観だの自虐文化観だのというかもしれない。それでも、読んでみる価値はある。なにせ、オモシロイ。(以下、目次)

天皇(天皇日常/天皇の村/人世劇場 天壌無窮篇) 古代への旅(赤い米・白い骨・青い島/三千年前のシンセサイザー/東京の縄文人/貝塚の特別料理人/お米は西からやってきた/光る森の文化説/半島・列島・直行便/ドキュメント倭人伝/謎の鉄器来襲/「卑彌呼」を求めて韓国までいった/気になる倭人伝/日本人のことば/四世紀のデモクラシー) 戦争(人世劇場 神兵衰弱篇/チンパンの嘆き) 日本文化(肋骨/冑建築/悪魔の発明/インヴァネス/パッパカパーノ、パッパ) ミドルクラス(机の上のハガキ/ダンヒルに刻んだ頭文字/日暮れて道遠し/ロンドンからの電報/息詰る十分間) 日本人の舌(乾いた音/水の味/イカモノについて/スキヤキ戦争/箸の汚れ/唇の感触) 日本人のいる風景(三船敏郎氏のタタミイワシ/地震のない国/クダショー/塩田/人世劇場 色即是空篇/ポセイドン・アドヴェンチュア/スーパー民主主義/香水/日記まで/プ) 英語(ミルク世紀/ステレオホニックハイハイ/ハイ・スクール・イングリッシュ/和文英訳/アイ・アム・ア・ボーイ/この道二十年/母音/子音) 日本の街(失楽園/素朴な疑問/都市論 槙文彦) 日本人よ!(塀のいろいろ/契約 山本七平/日本人論 佐々木孝次)/出典/編集解説・松家仁之 

2019年3月9日にレビュー

伊丹十三の本

伊丹十三の本

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/04/21
  • メディア: 単行本



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