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「地図で見るフランスハンドブック 現代編」 ジャック・レヴィ編 原書房 [外交・国際関係]


地図で見るフランスハンドブック 現代編

地図で見るフランスハンドブック 現代編

  • 作者: ジャック・レヴィ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2019/01/28
  • メディア: 単行本


見る人が見れば、本書はたいへんオモシロイ本なのではないかと

原書房の「地図で見る・・」シリーズで、これまでアラブ世界に関するもの、東南アジアに関するものを読んだが、本書に関してはもてあましている。先に読んだ2冊は、取り扱い地域がひろく、マクロ的俯瞰的観点からのものであったが、本書はフランス一国である。しかも、著者がフランス人であることからか、微に入り細に入りという感じなのだ。評者は、フランスのごく一般的な知識も現代史も知らない。昨今のことについても無知である。そこにきて、突如、情報の洪水が押し寄せたという印象なのである。

だが、しかし、逆をいえば、ある程度の知識をもつ方が、フランス国内の種々の問題を知るうえではたいへん役立つのではないかと思う。よく分からないながらも、ひとつだけ評者が言えることは、日本と同じく、国全体が「一枚岩」であるなどということはないということだ。本書では、その政治的文化的に一枚岩でないところ、言わば地質の分布、ちらばりを、特殊な地図:統計地図(カルトグラム)で示して興味深い。EUの主要メンバー国であるフランスの現況を知ることは、フランス一国のみならず、EUの将来も展望できることになる。そういう点で、見る人が見れば、本書はたいへんオモシロイ本なのではないかと思う。

本書「はじめに」から、本書の特徴について述べたところを抜粋すると、以下のとおりである。

「本書は、まず、今日のフランス政治空間を、その20年の歴史とともに視野に入れている。それから選挙の得票分布図をほかの国と比較できるようにしたが、互いの類似は驚くほどで、熟慮をうながすものである。 なかんずく、本書では、別個に研究されることが多く、めったに総合されることのない政治的、社会学的、経済的、文化的なさまざまな実態のあいだの密接なつながりを考慮した。このアプローチが立脚しているのは、投票のさい市民によってなされた選択の、地域による差異を理解するためには、どこで生産されたものがどこで消費されているか、どこで提供されたものがどこで受領されるか、どこで新しい習慣が作り出されどこで伝統が維持されているかを知ることもむだではないという仮説である。政治は大小の行為者たちの決断によってなされるが、その決断の前後には、つねに社会的問題があるからだ。/ この政治シーンと社会との対話が読みとれるようにしようと、本書では新しい地図作製術を採用した。従来の地図にくわえて、それとは異なる特徴をもつ統計地図(カルトグラム)のおかげで、地図上に人の住まない、あるいはほとんど住まない視覚上の制約をのがれ、住民とその居場所を回復させることが可能となった。・・中略・・ ここで読者に提示されるのは、ステレオタイプと違う、近年に起こっていまだ進行中の、変異の深い刻印を受けた、もうひとつのフランスの肖像である。」

2019年2月24日にレビュー

地図で見るアラブ世界ハンドブック

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  • 作者: マテュー ギデール
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2016/11/28
  • メディア: 単行本



地図で見る東南アジアハンドブック

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  • 作者: ユーグ・テルトレ
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/11/27
  • メディア: 単行本



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