SSブログ

評伝 小室直樹:現実はやがて私に追いつくであろう 村上篤直著 ミネルヴァ書房 [自伝・伝記]


評伝 小室直樹(下):現実はやがて私に追いつくであろう

評伝 小室直樹(下):現実はやがて私に追いつくであろう

  • 作者: 村上篤直
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2018/09/18
  • メディア: 単行本


小室直樹が復活した

プロフィルによると著者は、同じくミネルヴァ書房から刊行された『小室直樹の世界』に著作目録と略年譜を執筆したという。本書を読んで第一に感じたのは、その作製した著作目録と略年譜に肉付けをして出来たモノという印象だった。出来事と関連するエピソード、著作の要約とながながとした引用などなどがバラエティー豊かに、悪く言えば粗雑に並べられている。

しかし、対象が超弩級、ウルトラヘビー級のオモシロイ人物なので、そんな瑣末な欠点はすべて吹っ飛んでしまう。昭和・平成の世に南方熊楠がよみがえったという感じである。その博識、ハチャメチャ、人間的な可愛さ:純情・シャイな点において、度を越している。ふつうのハカリでは計測不能・・・。

残念ながら、その「超天然記念人物」と称された小室直樹先生はもういない。評者は、亡くなる2年ほど前、古書店で山本七平との対談本(『日本教の社会学』)を105円で入手し、はじめて小室直樹を知り、その学識に驚嘆した。そして後に、その絶版となっていた本がオークションに出品されて3万8千円で落札されているのを知ってまたまた驚いた。それでも、手元にその本は残してある。売ることはなかった。

そうこうするうち、訃報を知る。巨星落つ。大きなメガネのふくろうのような写真が新聞に掲載されていた。「ミネルヴァのふくろうは、夜に飛びたつ」という言葉が思い浮かんだ。ふくろうは、この世を去ったのである。

著者は、飛び去ったフクロウを蘇生させる。評伝としてである。『あとがき』で、「小室先生は私の命の恩人です」と著者は記している。「科学はすべて仮説、モデルだ」と教えられ生きる希望を絶やすことなく保てたという。恩人に対する、深い感謝が本書に示されている。著者は、小室本人だけでなく、その父祖たちも蘇生させる。小室の曽祖父は会津藩士・宗像虎四郎という仮説を立て、検証する。評伝を外れて著者の創作的な部分も収められた本書は、恩人小室直樹への卒業論文のようなものかもしれない。博士存命であれば「よく調べました。よく出来ました」と褒めてくれるにちがいない。

2019年2月9日にレビュー

小室直樹さん、亡くなる:「日本教講義」動画
https://bookend.blog.so-net.ne.jp/2010-09-29

新版 三島由紀夫が復活する

新版 三島由紀夫が復活する

  • 作者: 小室 直樹
  • 出版社/メーカー: 毎日ワンズ
  • 発売日: 2023/04/16
  • メディア: 新書



小室直樹の世界―社会科学の復興をめざして

小室直樹の世界―社会科学の復興をめざして

  • 作者: 宮台真司
  • 出版社/メーカー: ミネルヴァ書房
  • 発売日: 2013/10/25
  • メディア: 単行本



くまぐす外伝 (ちくま文庫)

くまぐす外伝 (ちくま文庫)

  • 作者: 平野 威馬雄
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1991/06
  • メディア: 文庫



nice!(1) 
共通テーマ:

nice! 1