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死体が教えてくれたこと (14歳の世渡り術) 上野正彦著 河出書房新社 [児童文学]


死体が教えてくれたこと (14歳の世渡り術)

死体が教えてくれたこと (14歳の世渡り術)

  • 作者: 上野正彦
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2018/09/22
  • メディア: 単行本


いまや貴重

死を通して生について考え続けてこられた先生が、将来のある若い人々に直接話しかけるように記した本。自身が医学を志し 法医学をおさめ、死と向きあってこられた様子が記される。戦争のころ多感な青春期を過ごし、価値観の大きな変化を経験してこられた そのお話はいまや貴重である。

以下、目次

第1章 私は監察医という仕事をしています
事件や事故で死ぬ人びとがほうむられるまで
監察医制度は全国制度ではない
死因をさぐることは死体と語ること
死者と会話した日
名誉はいらない
漫画のヒーローの鑑定

第2章 なぜ監察医になったのか
「赤ひげ」だった父
医は仁術なり
戦争の前後で見た景色
父からわたされた一冊の本
死から生を見つめたい

第3章 2万体の死体と語った
忘れられない事件
初めて見た刑事の涙
ひどい親でもかばおうとする子たち
昭和の時代の心中事件
被害者の家族が背負うもの
親の強い愛が解決させた

第4章 人が死ぬということ
いじめによる自殺
死にたいは、生きたいということ
せまい井戸から出られるときがくる
自殺は他殺である
いつか親も亡くなっていく
なぜ学校に通うのか

第5章 未来を生きる君たちへ
死とは生きるということ
自分とは何なのか
監察医がいらない世の中になればいい
あふれるほどの夢をもとう

おわりに
2018年12月11日にレビュー

死体鑑定医の告白

死体鑑定医の告白

  • 作者: 上野 正彦
  • 出版社/メーカー: 東京書籍
  • 発売日: 2017/07/10
  • メディア: 単行本


医学は3つに分類される。人体の構造などを学ぶ基礎医学。治療を学ぶ臨床医学。もうひとつが、社会医学といい、社会の衛生とか、秩序を守る予防医学である。法医学は社会医学に属する学問であった。

中略

そして法医学教室を出て、東京監察医務院に入った。はじめは3年ほどやって、臨床医になる予定だった。だが、やめられなくなった。自分の考えていたことをはるかにしのぐ、数々の複雑な人間ドラマにぶつかったからだ。人生の表と裏というようなものを、学生ながらに知ることになった。真実を追うために、これは自分がやらなくてはならないと、使命感をいだいたのである。
(以上、「第2章 なぜ監察医になったのか/死から生を見つめたい」から引用)

私は監察医として、たくさんの死を見つづけてきた。そのせいか、何か特別な概念を持っているのではないかと思うのだろう。取材される方に、
「人間にとって死ぬとは、どういうことですか」
とよく質問されてきた。しかし、
「死とはナッシングだと思う」
と答えてきた。そうすると相手はたいがい、不思議そうな顔をする。もっと哲学的な答えを期待しておられるのだろう。だが、私は特別な死生観を持っていたわけではなかった。それはなぜかというと、仕事の性質がそうさせていたのだと思う。
現役のころには、検死の現場があいついでいた。たとえば幼い子どもが亡くなった。その母はどうしようもなく泣きくずれている。そのとき、私はこみ上げるものをおさえなければならなかった。悲しみにのめりこんでしまったら、次の現場へ行けなかったのだ。ひとつひとつ、死をしまいこんで、また別のところへ行く。解剖するということについても同じことがいえた。

(以上、「第5章 未来を生きる君たちへ/死とは生きるということ」から引用)
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