『説教したがる男たち』 レベッカ ソルニット著 左右社 [エッセイ]
本来、糸を紡ぐのは女たちの仕事である
9つの小品から成っている。表題作はブログ媒体に書かれて広く拡散したものだという。全編ほぼ一貫した内容といえる。巻頭エピグラフには「祖母たちに、平等主義者たちに、夢見る者たちに、理解ある男性たちに、歩み続ける若き女性たちに、道を開いた年上の女性たちに、終わらない対話に、そして2014年1月生まれのエラ・モスコビッツが存分に生きおおせるような世界に」とある。
『説教したがる男たち』の前には、沈黙している女たちがいた。しかし、著者は黙っていない。ユーモアをまじえてやりかえす。それは単に、対話における一場面ではなく、権威と力の問題だ。女たちは、男たちの権威と力にクモの巣によるように絡め取られ拘束されてきた。そのことを著者はプロテストする。
『グランドマザー・スパイダー』では、絵画論、『ウルフの闇』では文学論から自由の問題が扱われる。男たちにからめ取られてきた女たちではあるが、本来、クモのように糸を紡ぐのは女たちの仕事であることが示される。著者はウルフ同様、これからも言葉を紡ぎ続けるのだろう。「本書を訳すことは、この本が今紡がれるべくして紡がれた言葉でできており、一刻も早く世に出さなければいけない、という切迫感とともになされたものだった」と(『訳者あとがき』に)あるのも興味深い。
評者は、はじめてソルニットの著作に触れたが、その紡がれた言葉を奴隷となるためでなく、自由のためにくりかえし読むことになるように直観する。
2018年11月17日にレビュー
2023-07-25 16:48
nice!(1)