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『煉丹術の世界ー不老不死への道』 あじあブックス080 大修館書店 [宗教]


煉丹術の世界ー不老不死への道 (あじあブックス080)

煉丹術の世界ー不老不死への道 (あじあブックス080)

  • 作者: 秋岡英行
  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 2018/10/02
  • メディア: 単行本


中国文化を知るために

西洋中世の占星術、錬金術についての本を読むと、疑似科学という印象をもつ。擬似とはいうものの、その当時にしてみれば、立派な科学であったのだと思う。今日の科学とよばれるモノにしても、後代になれば、疑似科学として扱われる可能性は大いにある。星が人間の生活に関係しているという考えや金を他の物質から合成できるとする考えは、科学の進んだ今日では一笑に付されてしまうが、当時の人々のものの見方や考え方を知るうえで、貴重である。

「煉丹術」もそうだ。ざっと目を通しただけだが、気、陰陽、五行、八卦といった中国の思想・文化と関係していることが分かる。本書「まえがき」にも、〈不死を願った者たちは、ただやみくもに不死の薬を作ったわけではない。彼らは、自然界を、そして人間という生き物を綿密に観察し、分析したうえで、死を避けるにはどうすべきかを考え、不死の薬の作製に挑んだ。つまり、現代の治病薬が、病因を分析したうえでそれに対応すべく作られているのに対して、不死の薬は、生きるとはどういうことか、死ぬとはどういうことか、そして死を避けるためには何が必要か、といった問題に正面から向き合った結果を踏まえて作られていたのである。したがって薬を作る材料、装置、手順など、煉丹術全般において、中国人の物に対する見方や、自然界に対する向き合い方が色濃く反映されている。煉丹術について知ることは、中国文化を知ることにつながるのである。〉とある。

前半は『煉丹術入門』。煉丹術とは何か、不老不死の薬「丹」をさがす歴史が記される。「丹」は、外部の世界に見出されるとする「外丹」と人間の身体内部に見出されるとする「内丹」とに分かれる。始皇帝以前から不死願望はあり、外部にさがしても見出だせないので、後に作製するようになったのだという。その具体的な方法や、作られた「丹」が害毒でありながら長らく重んじられ、服用されてきたことなど記される。後半は「煉丹術の経典を読む」で、「抱朴子」など10の経典の解説。

出版に7年余かかったという。「難産」であったそうな。これは、読む者にとってもそれ相応の覚悟がいる。腰をおちつけ本腰を入れて臨まないと難しいかもしれない。それでも、中国文化を知るうえで、(気、陰陽、五行、八卦の本に直接アプローチするより)「いのち」という切実なものが関係してくるだけに、おもしろいモノが本書からは見えてくるように思う。

2018年11月16日にレビュー

気のコスモロジー―内部観測する身体

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  • 作者: 石田 秀実
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2004/07/29
  • メディア: 単行本



不老不死の身体―道教と「胎」の思想 (あじあブックス)

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  • 作者: 加藤 千恵
  • 出版社/メーカー: 大修館書店
  • 発売日: 2002/12/01
  • メディア: 単行本



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