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『数学の歴史物語 古代エジプトから現代まで』 Jonny Ball著 SBクリエイティブ [数学]


数学の歴史物語 古代エジプトから現代まで

数学の歴史物語 古代エジプトから現代まで

  • 作者: Jonny Ball
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2018/07/14
  • メディア: 単行本


“本物の”数学者「イアン・スチュアート 絶賛」

著者は、数学者ではない。なんら学位を持たないばかりか、スタンダップ・コメディアンだという。〈日本で言ったら北野武のようなものだろうか〉と(「訳者あとがき」)にはある。いわゆるアマチュア数学者である。それでも、(本書「はじめに」)、幼少のころから数学に多大な関心をもってきた様子が記される。後に、テレビ界に呼ばれBBCに出演し、さらにはコメディ番組、子ども向け番組のテレビ台本を書くようになる。人気が出て〈冠番組を持つとしたら何をやりたいかと聞かれて、即座に「数学の番組さ!」と答え〉、みんなを唖然とさせる。そうして、〈番組『シンク・オブ・ア・ナンバー』が始まり、その第1シリーズは英国映画テレビ芸術協会賞を受賞した〉という。

そういう著者ならではの書籍と本書はいえる。そうとう数学的に深く突っ込んだ内容も示され(数式も出てく)るが、オモシロイ。コメディーを見聞きするようにとまでは言えないが、ユーモアを多分に感じる。そもそも、人々の数学への恐怖心を取り除くのが著者の執筆動機であり、数学は大海のようなもので、その奥深さと驚きを知ることを望んでいる。そして、数学の大海に一緒に飛び込むようにと著者は誘う。誘うにあたってアインシュタインの言葉を引用しもする。それは、〈7歳の子供に説明できなければ、本当に理解していることにはならない〉というものだ。いくらなんでも7歳には無理だと思うが、その心意気は伝わってくる。

内容をひとことで言うなら、数学が人間生活のさまざまな分野にどのような影響を与え、逆に与えられて発展してきたか、とまとめられそうだ。著者自身の言葉にしたがえば、〈数学や科学や技術、芸術や音楽、建築や工学がすべて、数々の偉業を懸ける壮大なリレー競争を通じて発展してきたことを伝える〉である。

今日、数学のある解法の仕方を知っていても、その背景的な知識を知らず機械的にそうしている場合も多い。本書からは、その数学的背景だけでなく、そもそもそのようなアイデアが浮かんだ当時の事情まで見えてくる。だから、歴史に関心ある方もおおいに楽しめる。

たとえば、哲学者プラトンに関する記述で〈アカデメイアの入口の上には「数学を知らない者は入れさせるな」という言葉が掲げられていた。プラトンにとって数学は、天界のことを調べて説明するための道具〉とあり、アリストテレスに関する記述には、〈アカデメイアでプラトンに学んだが、紀元前347年に師が世を去ると、この学び舎では数学ばかりで哲学が十分に教えられていないと不満を訴えてアテナイを離れた〉とある。そして、そのアリストテレスにあまり評価されていなかったキオスのヒポクラテスが、その「原論」にある〈2本の直線を使ってさまざまな種類の基本的数学演算をおこなう方法(三数法)をおそらく史上はじめて思いつき、その大きな威力に気づいた〉ことにふれて、その実例を示した後、〈この2つの例があまりに有用だったため、およそ2000年後にデカルトはこの両方を、偉大な著作『幾何学』(第12章を見よ)の冒頭に挙げた。デカルトが幾何学と代数学を結びつけたことが、ニュートンやライプニッツに着想を与え、間接的に産業革命を引き起こした。礎となる数学がなかったら、蒸気機関やそれ以降のあらゆる技術は発展しなかっただろう(p058)」とある。

“本物の”数学者「イアン・スチュアート 絶賛」と書籍・帯にあるが、ナルホドと思う。

2018年10月30日にレビュー

1から学ぶ大人の数学教室:円周率から微積分まで

1から学ぶ大人の数学教室:円周率から微積分まで

  • 作者: ジェイソン ウィルクス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/02/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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