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『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』 山口 周著 KADOKAWA [哲学]


武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50

  • 作者: 山口 周
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/05/18
  • メディア: 単行本


滋養物のお裾分けを本書からもらえる

たいへん面白い。安直にこうしたマトメ本を読んで分かった風なことを(上司、同僚、後輩から)言われてはかなわんナーと思ったが、本書の内容をよく理解して分かった風に言うのであれば許されるように思う。

哲学の本と称して哲学用語を振り回すだけの本、よく分からないで終わってしまう本は少なくない。が、本書はちがう。著者は哲学的キーコンセプトを自身の仕事(ビジネスコンサルタント)の中で活かしてきた。それを自在に語っている。その中には、哲学の範囲を超えたものもある。社会学、心理学の分野にあるものも多い。が、昔の学問分類からいくなら立派に哲学である。いずれにしろ、それらを自分の生活に引き付けて、自分のものとして語っている。それが、できるのは、本当に咀嚼し消化している証拠である。そうして得た滋養物のお裾分けを本書からもらえる。

また、本書では、現代社会における今日的課題やその解決策を示唆してもいる。それを堅苦しい話としてでなく、自身の経験など身近な話題に言及しながら提供してくれているので、読み物としても面白い。

最後に『ビジネスパーソンのための哲学ブックガイド』がついている。それに付されたコメントもいい。

2018年9月25日にレビュー




劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか (光文社新書)

劣化するオッサン社会の処方箋 なぜ一流は三流に牛耳られるのか (光文社新書)

  • 作者: 山口周
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2018/09/13
  • メディア: 新書


 (以下、目次)

プロローグ―無教養なビジネスパーソンは「危険な存在」である

なぜ、ビジネスパーソンが「哲学」を学ぶべきなのか?
①状況を正確に洞察する ②批判的思考のツボを学ぶ ③アジェンダを定める ④2度と悲劇を起こさないために

第1部 哲学ほど有用な「道具」はない
本書といわゆる「哲学入門」の違い
①目次に時間軸を置いていない ②個人的な有用性に基づいている ③哲学以外の領域もカバーしている
なぜ、哲学に挫折するのか?
歴史上の全ての哲学者の論考を、2軸で整理する 「Whatの答えは、ツマラナイものが多い 大切なのは「プロセス」からの学び 「我思う、ゆえに我あり」が重要でない理由

第2部 知的戦闘力を最大化する50のキーコンセプト
●第1章 「人」に関するキーコンセプト 「なぜ、この人はこんなことをするのか」を考えるために
1 ロゴス・エトス・パトスー論理だけでは人は動かない(アリストテレス) / 2 予定説 努力すれば報われる、などと神様は言っていない(ジャン・カルヴァン) / 3 タブラ・ラサ 「生まれつき」などない、経験次第で人はどのようにでもなる(ジョン・ロック) / 4 ルサンチマン あなたの「やっかみ」は私のビジネスチャンス(フリードリッヒ・ニーチェ) / 5 ペルソナ 私たちは皆「仮面」を被って生きている(カール・グスタフ・ユング) / 6 自由からの逃走 自由とは、耐え難い孤独と痛烈な責任を伴うもの(エーリッヒ・フロム) / 7 報酬 人は、不確実なものにほどハマリやすい(バラス・スキナー) / 8 アンガージュマン 人生を「芸術作品」のように創造せよ(ジャン・ポール・サルトル) / 9 悪の陳腐さ 悪事は、思考停止した「凡人」によってなされる(ハンナ・アーレント) / 10 自己実現的人間 自己実現を成し遂げた人は、実は「人脈」が広くない(エイブラハム・マズロー) / 11 認知的不協和 人は、自分の行動を合理化するために、意識を変化させる生き物(レオン・フェスティンガー) / 12 権威への服従 人が集団で何かをやるときには、個人の良心は働きにくくなる(スタンレー・ミルグラム) / 13 フロー 人が能力を最大限に発揮し、充足感を覚えるのはどんな時か?(ミハイル・チクセントミハイ) / 14 予告された報酬 「予告された報酬」は、創造的な問題解決能力を著しく毀損する(エドワード・デシ)

●第2章 「組織」に関するキーコンセプト―「なぜ、この組織は変われないのか」を考えるために
15 マキャベリズム 非道徳的な行為も許される。ただし、よりよい政治のためなら(ニッコロ・マキャベリ) / 16 悪魔の代弁者 あえて「難癖を付ける人」の重要性(ジョン・スチュアート・ミル) / 17 ゲマインシャフトとゲゼルシャフト かつての日本企業は「村落共同体」だった(フェルディナンド・テンニース) / 18 解凍=混乱=再凍結 変革は、「慣れ親しんだ過去を終わらせる」ことで始まる(クルト・レヴィン) / 19 カリスマ 支配を正当化する3つの要素 「歴史的正当性」「カリスマ性」「合法性」(マックス・ヴェーバー) / 20 他者の顔 「わかりあえない人」こそが、学びや気づきを与えてくれる(エマニュエル・レヴィナス) / 21 マタイ効果 「おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう」(ロバート・キング・マートン) / 22 ナッシュ均衡 「いい奴だけど、売られたケンカは買う」という最強の戦略(ジョン・ナッシュ) / 23 権力格差 上司は、自分に対する反対意見を積極的に探せ(ヘールト・ホフステード) / 24 反脆弱性 「工務店の大工さん」と「大手ゼネコンの総合職」はどちらが生き延びるか?(ナシーム・ニコラス・タレブ)

●第3章 「社会」に関するキーコンセプト―「いま、何が起きているのか」を理解するために
25 疎外 人間が作り出したシステムによって人間が振り回される(カール・マルクス) / 26 リバイアサン 「独裁による秩序」か? 「自由ある無秩序」か?(トマス・ホッブズ) / 27 一般意志 グーグルは、民主主義の装置となりえるか?(ジャン・ジャック・ルソー) / 28 神の見えざる手 「最適な解」よりも「満足できる解」を求めよ(アダム・スミス) / 29 自然淘汰 適応力の美は突然変異によって偶発的に生み出される(チャールズ・ダーウィン) / 30 アノミー 「働き方改革」の先にある恐ろしい未来 / 31 贈与 「権力を排除し、給与をもらう」ではない関係を作ろう(マルセル・モース) / 32 第二の性 性差別はとても根深く、血の中、骨の中に溶け込んでいる(シモーヌ・ド・ボーヴォワール) / パラノとスキゾ 「どうもヤバそうだ」と思ったらさっさと逃げろ(ジル・ドゥルーズ) / 34 格差 差別や格差は、「同質性」が高いからこそ生まれる(セルジュ・モスコヴィッシ) / 35 パノプティコン 「監視の圧力」を組織でどう飼いならすか(ミシェル・フーコー) / 36 差異的消費 自己実現は「他者との差異」という形で規定される(ジャン・ボードリヤール) / 37 公正世界仮説 「見えない努力もいずれは報われる」の大嘘(メルビン・ラーナー)

●第4章 「思考」に関するキーコンセプト―よくある「思考の落とし穴」に落ちないために)
38 無知の知 学びは「もう知ってるから」と思った瞬間に停滞する(ソクラテス) / 39 イデア 理想に囚われて現実を軽視していないか?(プラトン) / 40 イドラ 「誤解」にはパターンがある(フランシス・ベーコン) / 41 コギト 一度チャラにして「疑えないこと」から再スタートしてみよう(ルネ・デカルト) / 42 弁証法 進化とは「過去の発展的回帰」である(ゲオルグ・ウィルヘルム・フリードリッヒ・ヘーゲル) / 43 シニフィアンとシニフィエ 言葉の豊かさは思考の豊かさに直結する(フェルディナンド・ソシュール) / 44 エポケー 「客観的事実」をいったん保留する(エドムント・フッサール) / 45 反証可能性 「科学的である」=「正しい」ではない(カール・ポパー) / 46 プリコラージュ 何の役に立つのかよくわからないけど、なんかある気がする(クロード・レヴィ=ストロース) / 47 パラダイムシフト 世の中はいきなり「ガラリ」とは変らない(トーマス・クーン) / 48 脱構築 「二項対立」に縛られていないか?(ジャック・デリダ) / 49 未来予測 未来を予測する最善の方法は、それを「発明」することだ(アラン・ケイ) / ソマティック・マーカー 人は脳だけでなく身体でも考えている(アントニオ・ダマシオ)

ビジネスパーソンのための哲学ブックガイド
アリストテレス『弁論術』(岩波文庫) プラトン『パイドロス』(岩波文庫) 小室直樹『日本人のための宗教原論』(徳間書店) マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫) 冨田恭彦『ロック入門講義』(ちくま学芸文庫) ニーチェ『道徳の系譜』(岩波文庫) 竹田青嗣『ニーチェ入門』(ちくま新書) 永井均『これがニーチェだ』(講談社現代新書) エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』(東京創元社) アダム・ハート=デイヴィス『パブロフの犬:実験でたどる心理学の歴史』(創元社) キャサリン・コーリンほか『心理学大図鑑』(三省堂) 海老坂武『NHK100分de名著2015年11月号 サルトル「実存主義とは何か?」』(NHK出版) ハンナ・アーレント『エルサレムのアイヒマン』(みすず書房) A・H・マズロー『人間性の心理学』(産業大学出版局) 小坂井敏晶『社会心理学講義』(筑摩書房) スタンレー・ミルグラム『服従の心理』(河出文庫) M・チクセントミハイ『フロー体験入門』(世界思想社) 藤沢令夫『プラトンの哲学』(岩波新書) プラトン『饗宴』(岩波文庫) ベーコン『ノヴム・オルガヌム』(岩波文庫) デカルト『方法序説』(岩波文庫) 竹田青嗣『竹田教授の哲学講義21講』(みやび出版) 田坂広志『使える弁証法』(東洋経済新聞社) 内田樹『寝ながら学べる構造主義』(文春新書) 橋爪大三郎『はじめての構造主義』(講談社現代新書) 谷徹『これが現象学だ」(講談社現代新書) レヴィ=ストロース『悲しき熱帯』(中央公論新社) トーマス・クーン『科学革命の構造』(みすず書房) アントニオ・R・ダマシオ『デカルトの祭り』(ちくま学芸文庫) マルクス・エンゲルス『共産党宣言』(岩波文庫) 東浩紀『一般意志2.0』(講談社文庫) 堂目卓生『アダム・スミス』(中公新書) マット・リドレー『進化は万能である』(早川書房) デュルケーム『自殺論』(中公文庫) マルセル・モース『贈与論』(ちくま学芸文庫) A・シュヴァルツァー『ボーヴォワールは語る』(平凡社ライブラリー) ジャン・ボードリヤール『消費社会の神話と構造 新装版』(紀伊国屋書店) ナシーム・ニコラス・タレブ『反脆弱性』上下(ダイヤモンド社)


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