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『積乱雲 ー都市型豪雨はなぜ発生する?』 小林文明著  成山堂書店 [科学一般]


積乱雲 ー都市型豪雨はなぜ発生する?ー

積乱雲 ー都市型豪雨はなぜ発生する?ー

  • 作者: 小林文明
  • 出版社/メーカー: 成山堂書店
  • 発売日: 2018/07/31
  • メディア: 単行本


積乱雲は猛獣だ

ゲリラ豪雨をもたらす入道雲:積乱雲についての本です。その生態について豊富なカラー写真・イラストで説明されてまいります。発生期、発達期、最盛期、衰弱期のライフサイクルがあるのですから、生態といってもいいでしょう。実際、まるで生きもののようです。

最新のレーダーを使っての「雲を掴む」話もでてきます。だいぶ専門的になりますが、はじめから読んでいけば、ダイジョウブだと思います。脚注など用いつつ丁寧に順次説明がなされていきます。かわいい雲のイラストも説明してくれます。

「雲は天才だ」といった詩人がいますが、本書の読後感からいくと「積乱雲は猛獣だ」と言いたい気分です。山岳部、平野部、どこでも積乱雲は生まれますが、とりわけ “都心(都会)生まれの積乱雲は凶暴化する(p118)”ということです。その凶暴な積乱雲に対応するために、「まさに今、さまざまな“眼”で“雲を掴む”ことが可能になりつつあります。スマホなど携帯電話でリアルタイムのレーダー画像を見ながら頭上の空を見上げて、個人が行動を判断できる時代になったといえます(「ハザードマップ」p105)」という記述もあります。

雲への愛情が伝わってくるような本です。猛獣をペットにしてかわいがる方もおりますが、著者もそうしたひとりにちがいありません。

2018年9月22日にレビュー

竜巻ーメカニズム・被害・身の守り方ー

竜巻ーメカニズム・被害・身の守り方ー

  • 作者: 小林文明
  • 出版社/メーカー: 成山堂書店
  • 発売日: 2014/08/21
  • メディア: 単行本



ダウンバースト―発見・メカニズム・予測

ダウンバースト―発見・メカニズム・予測

  • 作者: 小林 文明
  • 出版社/メーカー: 成山堂書店
  • 発売日: 2016/08/01
  • メディア: 単行本


積乱雲は、地上付近から上空の圏界面(脚注:対流圏(地上から高度10km)と成層圏(高度10~45km)の境界、対流圏界面。)まで鉛直方向に発達する対流雲(脚注:対流によって発生して鉛直方向に発達する雲。積雲および積乱雲。)です。一般に、雲は上層雲(巻雲など)、中層雲(高積雲など)、下層雲(層雲など)とある高度に発生するものですが、積乱雲だけは、すべての層を突き破って天井(圏界面)まで達する特別な雲といえます。積乱雲を見たことのない人はいないと思いますが、著しい時間変化を示し、その形状は発生期、発達期、最盛期、衰弱期で大きく変化をします。その形状も、塔状、ドーム状、カリフラワー状などさまざまです。また、夏の積乱雲と冬の積乱雲は、マルチセル、スーパーセル、クラウドクラスターなど、その構造によっても様相は大きく異なります(2章)。

実際の積乱雲でそのライフサイクルをみていきましょう(口絵参照)。モクモクとした積雲の塊が鉛直方向に成長し始めるのが発生期、強い上昇流により成長を続ける発達期、雲内に十分な降水粒子(脚注:雲から落下する雨、雪、雹(ひょう)、霰(あられ)などの粒子の総称。)が形成されるのが最盛期です。活発な積乱雲はしばしば高度10kmを超え、圏界面に達してかなとこ雲が形成されます。この段階が最盛期に当たり、強い降雨とともに下降流が生じるため、豪雨や降雹、ダウンバーストは積乱雲の最盛期の現象といえます。衰弱期になると、対流(上昇流)が弱まり、雲自体が消えていくのがわかります。この事例では、積乱雲が圏界面に達してかなとこ雲が形成されたのは、発生約1時間後であり、この積乱雲の寿命は約2時間でした。(p4の積乱雲の写真参照)
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