『物語を忘れた外国語』 黒田 龍之助著 新潮社 [言語学(外国語)]
ユーモアあふれるエッセイ(「読書案内」として読むこともできる)
ユーモアあふれるエッセイ。外国語能力を向上させようとするときに、用いる方法の主流は外国語学校と検定試験。しかし、著者は「物語を選」ぶという。著者にとっては「物語を読むことが食事をとるのと同じくらい自然なのである」。
「30代の終わりから40代の初めにかけて大学の英語教師に突然なってしまったとき、もちろん英語力をもっと上げなきゃと考えたのだが、そのとき始めたのはヘンリー・フィールディングの『トム・ジョーンズ』を原書で読むことだった」と記す。
そういう著者が、『物語を忘れた外国語』に偏向する世にあって、外国語にまつわる物語の数々を紹介していく。物語の中には、外国語・映画も入る。戯曲・シナリオも入る。著者の好みは喜劇であることが示される。シェイクスピアは『お気に召すまま』。版は“SHAKESPEARE MADE EASY”版が勧められる。その延長にある究極の(著者に合う)方法として「ニール・サイモン効果」について記される。
著者お勧めの外国文学・日本文学「読書案内」として読むこともできる。すべてではないが、小説、映画の簡潔な要約も示され、食指をそそられる。その意味において簡単な索引、一覧を付録として欲しかった。
2018年8月14日にレビュー