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『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』 高野 秀行・清水克行 集英社インターナショナル [読書案内]


辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦

辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦

  • 作者: 高野 秀行
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2018/04/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)


本書から得られる「教養」は、たいへん大きい

3ヶ月ごとに、課題図書を出し合い、8冊の本について語り合う。つまり2年にわたる二人「読書会」であり、「読書合戦」の記録である。立ち会う者からすると、たいへん味わい深いもので、このままさらに「合戦」を続けて欲しく思う。

もっとも、高野氏にいわせると「今だから告白するが、正直何度も、『この読書会、もう辞めたい・・・』と思った」のだそうである。ある課題図書(高野氏自身が提案した『大旅行記』)は「ざっと読むだけでも2週間かかり」、提案された清水氏は「少ない夏休みを棒に振」るなどしたという。また、こうも記している。「本を読み、丹念にメモをとり、疑問点や意見、感想をまとめる。それだけではない。ときには同じ著者の他の著作やテーマに関連した別の著者の本まで読む。特に清水さんが熱心に『これを読んでおいたほうがいいですよ』と勧めてくる。読まないわけにいかないじゃないか」。

とはいうものの、同時に、「素晴らしい充実感に包まれた」時を過ごした、という。その「充実感」は、読む者にも伝わってくる。

同じく「あとがき」で、高野氏は「教養」について書いている。「ここではない何処か」を時間(歴史)と空間(旅もしくは辺境)という二つの軸で追求していくことは、『ここが今どこなのか』を把握するために最も有力な手段なのだ。その体系的な知識と方法論を人は教養と呼ぶのではなかろうか。 / もちろん、日常のルーティンにおいて、そんなことはほぼどうでもいい。だから往々にして教養は『役に立たない空疎な知識』として退けられ、いまやその傾向はますます強まっている。でも、個人や集団や国家が何かを決断するとき、自分たちの現在位置を知らずしてどうやって方向性を見定めることができるだろう。 / その最も頼りになる羅針盤(現代風にいえばGPS機能)が旅と歴史であり、すなわち『教養』なのだと初めて肌身で感じたのだ。同時に五十歳を過ぎてそんな初歩的なことに気づくようだから、私の人生は迷走の繰り返しだったのだと腑に落ちた。でも重要な決断は人生あるいはその集団や国家が終わるまで必要とされるのであり、教養を学ぶのに遅すぎることはないとも思うのである。」

「辺境」へ旅し、歴史へ分け入るその深さゆえ、本書から得られる「教養」は、たいへん大きい。

2018年6月6日にレビュー

世界の辺境とハードボイルド室町時代

世界の辺境とハードボイルド室町時代

  • 作者: 高野 秀行
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2015/08/26
  • メディア: 単行本



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