『文豪の朗読 (朝日選書)』 朝日新聞出版 [文学・評論]
実際の「声」を聞きたいところだが・・・
『朝日新聞』での連載を書籍化したもの。
「文豪」たち(谷崎、井伏、室生、吉川、志賀、佐藤、井上、川端、野上、大佛、開高、海音寺、北、長谷川、武者小路、五木、遠藤、吉行、安岡、小島、倉橋、吉村、水上、有吉、谷川、尾崎、辻井、三島、高橋たか子、安東次男、辻)の録音を聞いての感想と読まれた本文が掲載されている。
感想を記したのは、いとうせいこう、島田雅彦、朝吹真理子、江国香織、奥泉光、本郷和人、山下澄人、角幡唯介、木内昇、佐伯一麦、堀江敏幸、リービ英雄の面々。同じ「文豪」の異なった作品を、異なった評者が評してもいる。その違いを知るのも楽しい。
コンパクト・ディスクが発売される前、レコードの時代に、薄くて赤く透明なペラペラの模造レコードのようなものがあった。ソノシートと呼ばれていた。1960年代に人気を博した雑誌『月刊 朝日ソノラマ』などの付録ソノシートに録音されたものが音源。
割り当てられた自作品を、ただ几帳面に読んだだけのものではない。録音場所が作者の別荘だったりイベント会場だったりして、周囲の音が入り込んでいたり、録音する係りの者との会話や独り言、照れて発した言葉なども入っているらしい。
選び取られた「文豪」の掲載作品をとおして文豪その人に触れることができるし、それを評する作家たちの人柄・資質がその「耳」をとおして逆照射されてもいる。
できれば、実際の音源を聞きたいところ。だが、ネット配信するなどのサービスはないようだ。
2018年4月27日にレビュー